怖い瞬低をキャパシタで解決、中部電力が大容量装置を開発スマートグリッド(2/2 ページ)

» 2012年01月20日 18時30分 公開
[畑陽一郎,@IT MONOist]
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リチウムイオンキャパシタの利点とは

 リチウムイオンキャパシタは、キャパシタ(コンデンサ)の一種(図3)。内部抵抗がリチウムイオン二次電池と比べて小さいため、瞬間的に大電力を引き出す用途に向く。これは今回の装置にまさに適した性質だ。さらにリチウムイオン二次電池と比べて寿命が長く、ユニットの交換が不要だ。これも今回のような定置型の装置に向いた性質だ。ただし、エネルギー密度がリチウムイオンよりも最大で1桁低いため、電気自動車(EV)の電池を置き換えることはいまだ難しい。

 大容量キャパシタには2つの方式がある。最初に実用化されたのは電気二重層キャパシタだ。既に、携帯電話機などに広く利用されている。電気二重層キャパシタは、多孔質の活性炭電極表面に電荷を帯びたイオンが吸着することで電力を蓄える。

 リチウムイオンキャパシタは、電気二重層キャパシタを改良したもの。正極(図3の上図右側)は電気二重層キャパシタとほぼ同じだが、負極(図3の上図左側)にリチウムイオン二次電池と似た仕組みを取り入れた。

 キャパシタが蓄えられるエネルギーの量、E=1/2 CV2(E:エネルギー量、C:静電容量、V:電圧)と表すことができる。電気二重層キャパシタでは、電圧が最大でも2.5V程度、一方、リチウムイオンキャパシタでは電圧を3.8Vまで高めることができる。今回開発した装置のエネルギー量が、従来装置の3倍に高めることができたのは、このような理由による。

 ただし、リチウムイオンキャパシタにも弱点はある。図3の負極に示したように、黒鉛(グラファイト)の層の間にリチウムイオンが挿入される(または取り出す)過程は、電気二重層よりも遅い。このため、大電流を取り出すのに必要な時間が、電気二重層キャパシタよりも多少長くなる。もう1点は、リチウムを使うため、材料コストで不利である。

図3 リチウムイオンキャパシタの動作 図上が充電後の状態、図下が放電後の状態である。灰色の丸はリチウムイオンを、オレンジの丸は有機陰イオンを示す。充放電がイオンの移動によって起こることが分かる。なお、リチウムイオンキャパシタは通常のコンデンサが利用する比誘電率の高い誘電体を含んでいない。電極表面に集まったイオンがわずかに移動するだけでキャパシタの充放電が完了するため、短時間で大電流を取り出しやすい。出典:中部電力

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