「CADは難しくなり過ぎた」――NX 8ならどうする?シーメンスPLMソフトウェアのNX 8日本向け記者説明会

設計者がCADから離れてしまった原因には、その複雑さに原因がある? NX 8では、3次元データにまつわる膨大で複雑な情報へのアクセスするための操作を直感的に。

» 2011年11月25日 20時50分 公開
[小林由美MONOist]

 シーメンスPLMソフトウェアは、2011年11月25日、同社の3次元設計ツールの新製品「NX 8」に関する日本向け説明会を開催した。

 NX 8は、2011年10月17日(現地時間)に米国で先行発表。同製品では、HD3Dの機能を拡張し、モデリング、CAEの「NX Nastran」、CAD/CAM機能など、設計製造にまつわる全機能を強化したのが特徴だ。


島田太郎氏 シーメンスPLMソフトウェア日本法人 代表取締役社長兼米シーメンスPLMソフトウェア 副社長 島田太郎氏

 今日の製品は非常に複雑化し、設計もさまざまな要素を複合させなければこなせなくなってきた。その一方で、シーメンスPLMソフトウェア日本法人 代表取締役社長兼米シーメンスPLMソフトウェア 副社長の島田太郎氏は、現在のCADにおける問題をこのように指摘する。「正直な話、CADという仕組みは過去20年の歴史の中で、はっきりいって、難しくなり過ぎました」。

 分野によっては、設計者はCADを使わず、モデリングはオペレータに託すというケースがあるが、そのような状況も、CADの複雑さが招いたと述べた。NX 8では、「設計者自ら操作し、設計に使ってもらう」ために、CADの中から、膨大かつ複雑な情報に簡単にアクセスできる仕組みを提供するという。設計者にとってもすっかり身近になったGoogleのように、「検索キーワードを入れれば、必要な情報を探せる」といったことをPLMの世界で実現させる。すなわちそれが、NX 8の「HD3D」であるという。

 また、NX 8は同社のデータ管理システム「Teamcenter」と非常に堅くアーキテクチャを融合。同製品では、グローバルな設計環境を支援するという。

 「いま日本の中では、少子化が進み、円高の状況が続いています。日本で単にモノを作り、輸出すればいいという時代は、残念ながら遠ざかりつつあります。日本の市場自体が縮まる中、グローバルで勝たねば、日本製造業は生き延びられないと思います。そんな中、グローバルに設計を進めるに当たり、NXを使ってコンカレントに、日本、米国、中国、欧州、インド……といったような地域と一緒に設計ができる仕組みが求められています」(島田氏)。

NX 8の新機能ハイライト4

ポール ブラウン(Paul Brown)氏 米シーメンスPLMソフトウェア NX製品ライン担当 シニア・マーケティング・ディレクタ ポール ブラウン(Paul Brown)氏

 米シーメンスPLMソフトウェア NX製品ライン担当 シニア・マーケティング・ディレクタのポール ブラウン(Paul Brown)氏は、NX 8の主な新機能4つについて、デモを交えて下記のように説明した。

1.HD3Dの機能拡張

 「HD3Dでは、さまざまな改良を加えています。その中で最も重要な拡張機能の1つがNXおよびTeamcenter以外のシステムからもデータを抽出する機能だと考えています」(ブラウン氏)。

 HD3Dには、設計に必要な条件を可視化し、直感的に情報にアクセスすることを可能とする「ビジュアルレポート」の機能を備える。

 まず自動車のフルモデルの例を示しながら、その機能について説明。以下のデモでは、エンジン、サスペンション、冷却系、内装といった部位が色分けされ、かつそれぞれがどのサプライヤーによって製作されているか、タグ(アイコン)で表示させている。それぞれのタグを選択すると、それぞれの詳細な情報を表示可能だ。

 上記のようなサプライヤー情報だけではなく、コストや納期、進捗状況、設計担当者なども同様に紐(ひも)づけの対象にできる。

HD3D
HD3D HD3Dによる「ビジュアルレポート」のデモ

2.パート・モジュール

 通常、自動車や家電など複雑な構造物を設計する場合は、サブユニットごとにサブアセンブリーを分け、それぞれ担当を割り振った。ある部品1つのモデリングは、1人の担当者が受け持つのが基本だ。

 ただし、自動車のサイドパネルなど大型な部品になると、部品単体であっても、1人の担当者で設計が完結できない場合もある。そういった場合は、途中まである担当がモデリングし、途中で受け渡して別の担当に引き渡すといった作業の流れになった。

 NX 8の新機能の「パート・モジュール」は、そのようなとき、1パーツの要素をブロック分けして、それを担当者に割り振って、かつモデリング作業が同時進行可能だ。作業が完了すれば、分けたデータはマージできる。

part 「パート・モジュール」のデモ

3.複合領域における解析とトポロジー最適化機能

「例えば、ハイテクな電子部品などを設計する企業なら、まず熱の流れや空冷関係の要素がどうなっているか、また構造的な強度はどうかということに興味を持っていて、しかもそれを同時に解析したいと考えています。例えば、ガスタービンの設計なら、熱伝達の様子と同時に、ガスタービンの挙動も同時に解析することが望まれます」(ブラウン氏)。NX 8では、熱伝導や構造解析と併せ、制御動作の確認が同時に行える。

 また、新機能「トポロジー最適化」は、形状に対して応力解析と同様に、荷重や方向などを入力すると、その荷重を支えるのに最適な形状を自動で割り出してくれる。解析結果の形状は、3次元データとして取り出し、設計に役立てることができる。

トポロジー トポロジー最適化で割り出された形状

4.アセンブリ単位の加工プログラミングとプログラミングデータ管理

 CAD/CAM関連では、加工機械のROIを高める支援として、複数部品のセットアップをしたい場合において加工プログラムの自動化が行える新機能を追加した。

CAM CAM機能の強化

 上記4つはあくまで主要なものであり、NX 8ではほかにも多くの機能追加をしたということだ。

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