東京モーターショー2011では各社が環境対応車に力点をおく。ダイハツ工業は小型ながら50km走行可能なEVと、液体燃料電池を搭載し走行距離を500kmまで延ばした商用車を見せる。
ダイハツ工業は2011年11月9日、「東京モーターショー2011」(2011年12月2〜11日、東京ビッグサイトで開催)の出展内容を発表した。スズキや日産自動車と同様、電気自動車(EV)などの環境対応車を重視した内容になっている(関連記事:日産はEVの呼び寄せ、スズキはエンジン搭載のEV)。
出展する4車種4台のうち、1車種がEV「PICO(ピコ)」、もう1車種が燃料電池車「FC商CASE」である。
ピコは軽自動車と原動機付き自転車との間に位置付けられる新しいカテゴリーを狙ったEV(図1)。小型のツーシーターカーであり、前後2人乗りである。
1充電当たりの走行距離は50kmと長く、最高速度は時速50km。充電時間は200Vの場合2時間、100Vの場合4時間だ。スズキや日産自動車も同カテゴリーを狙っており、市場の反応によっては、四輪車と二輪車の中間の移動体が第3の車として盛り上がる可能性がある。
FC商CASEは、液体燃料電池を搭載した車。ダイハツ工業が開発した「貴金属フリー液体燃料電池」を搭載する。東京モーターショー2009ではプラットホームと液体燃料電池(PMfLFC:Precious Metal-free Liquid-feed Fuel Cell)技術のみの展示だったが、今回、完成車の形で見せる。なお、貴金属フリー液体燃料電池の開発は、25の研究機関と共同で進めている。
N2H4・H2O(ヒドラジン・ハイドレート)と呼ぶ液体燃料を利用する。濃度100%の液体燃料を利用した場合、1給油当たりの走行距離は500kmと長い。燃料タンクの容量は26L。
貴金属フリー液体燃料電池は、排気ガスとして空気の主成分であるN2(窒素)と水を排出する。
現在主流の固体高分子形(PMFC)燃料電池ではH+(水素イオン)が両極間を移動し、強い酸性雰囲気下で反応が進む。このため高価な白金触媒が必要だった。燃料電池のネックは触媒のコストであるという主張は、このように原理的なものだ。
一方、ダイハツ工業の方式では、OH−(水酸化物イオン)が移動し、アルカリ性雰囲気下で反応が進むため、触媒の選択肢が増え、低コスト化が可能だという。さらに燃料電池のセパレータ(アニオン交換膜)も安価な部材で構成できる可能性がある。
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