日本サムスンは同社の第三世代DDR3に関するセミナーを開催。ビッグデータ時代に企業に求められる「価値」を提供する省エネルギー技術を披露した。本稿では当日の模様をダイジェストで紹介する。
2011年10月5日、日本サムスンが主催する「Green Cloud Solution Seminar - hosted by Samsung―クラウドコンピューターを支えるサーバ用メモリーが経営のコストダウンを実現―」が開催された。
同社メモリ事業部は主に対データセンターやハードウェアメーカーとのB2Bのビジネスを展開していることもあり、直接ユーザー企業のCIO、CTOらを招いたイベントは、日本国内では初めて。本稿では当日の模様を紹介する。
日本サムスン 副社長 犬飼英守氏は20nm 4Gビット 1.35VのDDR3と50nm 2Gビット 1.5VのDDR3とのパフォーマンスの比較資料を基に、低消費電力メモリの優位性を強調した。
「世界中のデータセンターが20nm 4Gビット 1.35VのDDR3を導入すれば、消費電力は74TWh/年の削減が可能になる」
サムスンの第三世代メモリ(20nmクラス 4Gビット 1.35V)技術は、第一世代(50nmクラス 2Gビット 1.5V)と比較して67%電力消費量を削減できるという。第一世代のDDR3で96GByteのメモリを搭載すると65.3W/hの消費電力量となるが、同容量のメモリを20nmクラス 4Gビット 1.35V DDR3で組めば21.8W/hとなり、より少ない電力量で済むとしている(サムスンによる比較/8時間稼働、16時間アイドル状態で測定)。
富士通 IAサーバ事業本部長 近藤博昭氏は富士通製品における環境配慮設計の推進状況や省電力化の取り組みを紹介した。
同社では、オフコンやSPARCチップを搭載したUNIXサーバ機の他、IAサーバ(いわゆる“PCサーバ”)機シリーズを持つが、サーバに求められる性能も、今や処理能力や信頼性だけでなく、利用する事業者にとって、どれだけCO2排出量を抑制できるか、がポイントとなってきている。
同社のIAサーバ機「PRIMERGY」シリーズでも、低消費電力を狙った組み合わせを用意している。2011年5月に発表したばかりのRX200 S6省電力モデルだ。従来のPRIMERGY RX200 S6(Xeon E6506搭載機)と比較して、約33%の省電力化を実現している*。
*米国エネルギースタープログラム認定の数値。
一般的なサーバ機に搭載されるRegisterd DIMMの消費電力は標準で9W程度だが、これをLV-Registerd DIMM(低消費電力のRegisterd DIMM)に変更することで7Wに削減できるという。同社ではこの部分でサムスンが提供する「グリーンメモリ」製品を採用している。
サムスンの第三世代メモリ技術は、第一世代と比較して67%電力消費量を削減できるという。第一世代のDDR3で96GByteのメモリを搭載すると65.3W/hの消費電力となるが、同容量のメモリを第三世代のメモリで組めば21.8W/hとなり、より少ない電力で済む(サムスン調べ)。
同様にCPUも、消費電力量80WのXeon E5606から40WのXeon L6509(4core 8thread、1.86GHz、Turbo BoostおよびHyper-Threading非対応)に変更することで、消費電力を約50%削減、さらにS-ATAドライブからSSDドライブに変更すればアイドル時の消費電力も9.5Wから0.05Wに削減できる。
また電源も高効率電源に変更、ユニット内部の空気の流れを考慮した部品配置や、冷却ファンの稼働コントロールに独自のロジックを盛り込むなど、包括的なシステム設計により、省エネルギー化を実現している。
結果として、システムのハードウェア構成のみで、通常のPRIMERGY RX200シリーズと比較して33%の消費電力削減を実現している。
富士通ではこうしたハードウェア面での消費電力削減に加えて、サーバ監視ユーティリティも拡充し、消費電力削減、省エネ視点での付加価値を高められるラインアップの強化を進めている。
これらの総合的な省エネルギー施策によって、富士通ではサーバ機器にグリーンITの要素を持たせ、付加価値の高い製品に昇華しているといってよいだろう。
メモリ省エネ化の恩恵を最も受けるのは、各地にあるデータセンターだろう。特に最近ではSaaS、PaaS、IaaSなどのいわゆるクラウド型サービスが注目を集めている。災害対応、リソース削減、グローバル化対応など、さまざまな目的でサーバ類をデータセンターに集約、集中管理する仕組みを採用する企業が増えている。
データセンターの側にとっても、CO2排出量が少なければそれだけ、企業側へのカーボンオフセット負担を減らせる点が1つのアピールポイントとなる。同等程度の処理性能であれば、CO2排出量は少なくなった方がよい。もちろん、コスト削減の側面からも電力消費量は少ない方が好ましい。
近年、各地の製造拠点の実績情報や販売情報などをグローバルで統合する流れが加速している。海外拠点ではスピード感ある立ち上げを重視したクラウドシステムの採用も盛んだ。
データの統合・集中管理が進めば、データセンターで管理すべき情報量は膨大になってくる。特に今後は詳細な情報分析やそのベースとなる個々のデータの在り方が重視される。捨ててよいデータはないといっていいだろう。データ量の増加はそのままデータセンター利用コストや事業におけるCO2排出量の増加に結び付く。いわゆる“ビッグデータ”時代におけるデータセンター選定では、ユーザー企業側においてもこうしたコストや環境貢献の視点を重視していく必要があるだろう。
一方で、データセンター側とすれば、省エネルギーメモリを採用したシステムによって、単なるデータセンター以上の価値をユーザー企業に提供するチャンスとして捉えられる。
新しいテクノロジーをいかに自社ビジネスの中で価値として生かしていくかも考えさせられる内容だった。
イベント後半では、講演者諸氏と各界の著名人によるディスカッションが行われた。
ディスカッション内で、犬養氏から「企業では旧来CSRの観点からグリーンITが語られてきたが、(2011年3月11日に発生した東日本大震災とそれ以降の原発事故などに起因するエネルギーシフト論の盛り上がりなどを指して)3.11以降は、多くのコンシューマが積極的にグリーンなものを強く求めるようになった。省エネは1つの価値として見られるようになってきている。企業としてもCSR(Corporate Social Responsibility)ではなく、“CSV(Corporate Social Value)”が求められるようになっている」との指摘があった。
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