PTCがついにソフトウェア開発プロジェクト管理ツールも提供へ。MKS買収後の記者発表会では、今後の製品の方向性などに注目が集まった。
2011年7月19日、米国PTCのCEOであるジェームス・へプルマン氏が来日、2011年度の事業戦略について日本のプレス向けに発表した。
2010年度の業績や2011年度のビジョンなどの多くは、先の「PlanetPTC Live 2011」レポートに順ずるものだったが、幾つかのアップデートがあった。
へプルマン氏は、自社について「単なるソフトウェア製品を提供するのではなく、顧客に競争優位性をもたらすことそのものを事業のゴールとして考えている」と語った。
従来のCADツールやPDMといった個別部門向けの製品展開から、Windchill 10.0で示した多様な部門の多様な情報をPLMシステムの中に内包していく「エンタープライズPLM」に向かおうとしている同社製品ポートフォリオを前提としたものといえる(Windchill 10.0の記事参照)。
製品ファミリには既にフォルトツリー解析ツール「Relex」、多次元の製品解析ソフトウェア「InSight」、CO2排出量管理ツール「Rapid Carbon Modeling(RCM)」などが統合されている。また、ソフトウェアに関しては、「IBM Rational ClearCase」や課題管理ツール「JIRA」、統合ソフトウェア開発環境「Eclipse」、バージョン管理ツール「Subversion」、バグトラッキングシステム「Bugzilla」などのシステムと連携が可能になっている。
これに加え、2011年5月31日にはカナダを本拠地とする組み込みソフトウェア開発プロジェクト管理ツールベンダーMKSの買収も完了した。
今回の記者発表会でも話題の中心はMKSの製品「MKS Integrity」がPTCの製品ポートフォリオの中でどのような位置付けになるかという点だった。
次のリリースでは製品名は「PTC Integrity」(以降、本記事では「Integrity」と表記)となる。Windchillなどとのシステム連携強化については現在開発に着手しているところで「買収発表前からある程度、自社内で開発に着手していたこともあり、近々にリリースしたいと考えている」が、具体的なリリース時期については「半年は掛かる」としている。
製品のリリース体系については、Windchillのサブシステムとして提供するほか、従来同様に単体での提供も行っていく方針だという。
Integrityは、ソフトウェアの要件管理、構成管理、テスト管理などのほか、コストの予実管理などを単一アーキテクチャをベースに提供するソフトウェア開発プロジェクト管理ツール。航空機や車載ソフトウェアで既に導入実績を持っている。類似の機能を提供するものはIBMが2007年に買収したTelelogic製品群などがある。
へプルマン氏はまた、「10年前、PLMはERP概念の“衛星”のようなポジションだった。しかし、いまPLMはERPと並んで企業の根幹を担う重要なものになっている」とも語り、ERPが各業務のオペレーション管理であるのに呼応してPLMが「戦略」を担うようになっていると図示した。
図を見ると例えばサプライチェーン管理はERPにひも付いているが、サプライチェーン戦略はPLMにひも付いていることが分かる。設計の要件で下流工程のコスト最小化などの最適化をより積極的に行っていくべきとの考え方がうかがえる。
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