前ページの寿司(すし)職人 辰兄ィ(タツニィ)は、甚さんに以下のように語ったそうです。
プロの代表格である寿司職人は、どのような種類の魚でも、限られた予算の中で、より良いものを選ぶには「目利き力」が必要だ。
これが、プロの寿司職人としての原点である。
そして……、目利きが難しい魚の代表格がマグロである。
しかも、1本何百万円にもなるのがマグロであり、「失敗」が許されない。まさしく、「目利き力」が問われる。
その「目利き力」とは、
マグロの命は、脂の乗りと鮮度である。
限られた条件の中で、最高の食材を仕入れるための「目利き力」が上記なのである。
すごい! なんとなく、職人のプロ意識と材料選択に関する「目利き力」を理解できます。
そんじゃ、おいらも負けてはいられねぇ。そこで、技術の「職人」の「目利き力」をいまっから定義するぜぃ!
技術の職人も全く同じです。辰兄ィの言葉の単語を置き変えてみました。太字にした単語に注目し、上下を比較してください。
プロの代表格である技術職人は、どのような種類の材料でも、限られた予算の中で、より良いものを選ぶには「目利き力」が必要である。
これが、プロの技術職人としての原点である。
そして……、目利きが難しい材料の代表格が切削用材料、板金材料、樹脂材料である。
しかも、商品は3つの材料で90%を占め、「失敗」が許されない。まさしく、「目利き力」が問われる。
その「目利き力」とは、
材料の命は、QCDである。
限られた条件の中で、最高の材料を選択するための「目利き力」が上記である。
甚さん! すんごくよく分かりました。職人というプロが、僕の頭の中で定義できましたよ。
さすが、富士山麓大学の院卒だぁ! そんじゃ、ここらでまとめっかぁ。
★目利き力ポイント!:料理人の「目利き力」とは、限られた条件の中で、最高の食材を仕入れるための力量である。
★目利き力ポイント!:技術者の「目利き力」とは、限られた条件の中で、最高の材料を選択するための力量である。
技術者の職人を料理人と料理に例えるならば、
すなわち、技術者の目利き力とは……。
★目利き力ポイント!:技術者は、材料選択から勝負に出ること!
★目利き力ポイント!:材料の命は、QCDにあることを認識せよ!
そんじゃ、良君! 「食材オタク」、いや間違った「材料オタク」にならないためにも、材料を限定するぞ。これはかなり衝撃的なデータだ。マークしろ!
ジーク・ジンサン! 僕も、材料選択から勝負できる技術者になりたいです。
さすが、富士山麓大学の院卒だぁ! そんじゃ、いきなり材料を徹底的に絞ってみるぞ。
それでは、いきなり図2を見てみましょう。
この図は、当事務所のクライアントである日本企業、韓国企業、中国企業から得た「切削用材料」に関する「部品点数」の情報です。クライアントとは、EV車やソーラーパネルを含む電子機器関連産業が主な業種です。
なんと、材料に関する書籍やセミナーや機械雑誌で登場する約48種以上の切削用材料のうち、たった8種類で全体の70.5%も占めているのです。次に、ステンレス部品の多いことに驚愕(きょうがく)するでしょう。急速に一般化したまれにみる金属材料といわれています。
★目利き力ポイント!:EV車を含む電子機器の企業では、8種類の材料だけで全部品の70.5%を占める。
まずは、何でも知っている「材料オタク」ではなく、
その材料の特性を熟知する「目利き力」をもった「職人」となりましょう。
★目利き力ポイント!:なんでも知っている「材料オタク」ではなく、汎用材料の目利き力を養うことでプロの「職人」に近づくことができる。
なるほど! 工業国として急進しているあの国が、図2の第1位であるステンレス生産にこだわっている理由が手にとって理解できました。ところで甚さん、こんなに絞ってもいいんですか?
ユーハバ、グッド・クエスチョーン(You have a good question)!
材料に関する書籍やセミナーでは、JISを基本に、ありとあらゆる材料を取り上げます。それを受講する若手の技術者は、もう圧倒されてしまいます。しかも、あまりの数に結局、どれを選んでよいのか、ますます困惑の境地に陥ることになります。
いわゆる、学問としての知識は豊富になっても、実務としては役に立たない状況に陥るのです。
もう一度、図2を見てください。繰り返しますが、48種類以上もある材料から、たった8種類の材料に絞るだけで実務の70.5%として役立つと確信します。
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