ソニーは一般家庭やデータセンター、電気自動車の充電ステーションなどに向けたリチウムイオン二次電池モジュールを発売する。10年以上動作し、急速充電が可能で、安全性に優れるという。
ソニーは2011年4月18日、家庭用蓄電システムや非常用電源などに利用できる定置型のリチウムイオン二次電池モジュール「LIM1001」の量産出荷を2011年4月下旬から開始すると発表した。2010年6月にサンプル出荷を開始後、実証実験を重ねてきたもの。電池の正極材料を工夫したことで、10年以上の長寿命や高い安全性の他、急速充電が可能になったという。初年度3万台の販売を目指す。
LIM1001の容量は1.2kWhであり、図1右のように7台を連結すると一般家庭の1日当たりの平均電力使用量とほぼ同等である。制御機器を併用することで、電気自動車用の充電ステーションや、データサーバ、携帯電話の無線基地局用のバックアップ電源などにも利用可能だという。
LIM1001は二次電池の正極材料にオリビン型の結晶構造をとるLiFePO4(リン酸鉄リチウム)を用いる。同材料はLi(リチウム)以外には高価な金属を含んでいないため、部材コストを低く抑えることができる。全てのO(酸素)とP(リン)が強い共有結合で結びついているため、結晶構造が安定しており、満充電時、高温時、長期使用時でも電池の劣化が少なく安全である。
例えば、LIM1001は、室温で1日1回充放電を繰り返したとき10年以上の使用が可能だという。
一方、LiFePO4は電子伝導度とLi+(リチウムイオン)伝導度が共に低いため、内部抵抗が高く、一般には単位時間当たりに取り出せるエネルギー量(パワー密度)が小さくなってしまう。これは急速充電には向かない性質だ。
ソニーはLiFePO4の微粒子化や表面のカーボンコートなどの改善を加えて、パワー密度を改善したという。LIM1001では1時間で90%以上の充電が可能だ。なお、標準充電条件は、57.6V、24Aで2.5時間。
電池モジュールの端子間電圧は51.2V、最大出力2.5kW、複数の電池モジュールを直列、並列接続して目的に応じた電圧や容量を得ることが可能。
<訂正>記事の掲載当初、第2段落目で「LIM1001の容量は12.1kWhであり、一般家庭の1日当たりの平均電力使用量よりも多い」としていましたが、これは「LIM1001の容量は1.2kWhであり、図1右のように7台を連結すると一般家庭の1日当たりの平均電力使用量とほぼ同等である」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。上記記事は既に訂正済みです。
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