CAEベンダー MSCのドミニク・ガレロ氏が来日。中小企業への拡販を目的とした代理店戦略についてコメントした。日本へのYELL付き!
「私がMSCに入社したとき、営業からよくこんなことを聞きました。われわれの製品は、とにかく機能は豊富だが、価格はボーイングやエアバスなどのメーカーしか買えないほどだって……。ですから、われわれの製品のパッケージング戦略を考えたのです。基本的な機能を利用する分にはあまりお金が掛からないけれども、ちゃんと未来があるようにしました(必要に応じて機能拡張していける)」――エムエスシーソフトウェア(以下、MSC) CEO ドミニク・ガレロ(Dominic Gallello)氏は語った。
2010年9月に「MD Nastran Desktop」をリリース(記事末、関連リンクを参照)してから、同社の新規ユーザー数は順調に伸びているという。同時に基本機能を必要とするボリュームゾーンのユーザーを狙った取り組みには、2011年も引き続き投資を続けていくとのことだ。
自動車、航空、防衛分野には、グローバルで190社の企業があるが、その9割以上の180社は何らかの設計シミュレーションの領域でMSCの製品を使っているヘビーユーザーであるという。2011年03月29日には、ワシントン大学とマサチューセッツ工科大学で取り組むNASAの火星探査車「オポチュニティ」の開発で「MD Adams」が採用されたと発表している。
一方、中堅規模の部品メーカー(サプライヤー)は、同様にグローバルで、1万3500社中1400社がMSCユーザーであるが、全体の10%ほどである。重機、エネルギー、化学系では、5万7000社あるうちの3000社で、約5%。MSCは、トータルで9割以上を占めるこのポテンシャルユーザーに対し、積極的なアプローチをしていくとのことだ。例えば、「3次元CADは既に導入しているが、CAEへ本格的に取り組んでいない」といったところにも、ニーズが出てくるはずだと同社は考えているという。
MSCは今後、上記のような中堅企業にアプローチしていくにあたり、代理店販売を強化していく。2011年は、現在20%を占める代理店販売の売り上げ比率を30%まで拡大したいという。同年2月中旬には、販売代理店に対する説明会も開催している。
また2011年3月7日にはNECが同社と販売代理店契約を締結。MD Nastran DesktopとNECのHPCサーバやワークステーションを組み合わせた「CAEソリューションパック」を製品化した。こちらは同年3月末から出荷を開始している。販売価格は、198万円(税抜き)から。同製品では、OSとMD Nastran Desktopをプリインストールした、NECのHPCサーバやワークステーションを提供する。
ここ1、2年のモノづくりITの世界では、3次元CADやPDM、PLMのクラウド化の話題が聞こえてくるようになってきた。MSC製品がクラウド上に乗る可能性があるのかどうか? という問いにドミニク氏は、「うーん……、あるとは思いますが」と答えた。クラウドコンピューティングに投資をしているベンダーの話はよく聞くが、いまはまだ成果が出にくい段階ではないかと考えているという。解析は設計の中でもより機密性の高い部分を扱うことから、クラウドコンピューティングがユーザーに受け入れられるには高い壁があるのではないかという同社の見解だ。
ハードウェアベンダーを中心にクラウドコンピューティングの具体的なアプリケーションの議論が始まったばかりということもあり、MSC製品での対応については現時点では未定とのことだ。
MSCのグローバルの売り上げで、日本は23%を占める。「アメリカの会社(ITベンダー)は、日本の売り上げが10%ぐらいなのが普通ですが、われわれは倍以上なんです」(ドミニク氏)。同氏の日本への思いは、大きい。
本記事の取材でドミニク氏は、少しの英語交じりではあったが、流ちょうな日本語で応対してくれた。欧米ベンダーのCEO自らが日本語をしゃべるケースは、非常にレア。何を隠そう、ドミニク氏の奥さんは、日本人である。
同社の開発部の人員は、2011年中に100人増員する予定とのこと。開発4拠点の内訳は、米国とオランダ、インド、中国で、その半分がアジアである。「インドと中国の人たちは、数学に強い」とドミニク氏。数学の固まりであるといえるMSC製品開発において大きな力になると考えているとのことだ。
以前は、中国にも住んでいたことがあるという同氏のアジアへの思いが、今後のMSCの製品にどう反映されていくのか楽しみだ。
世界が希望と祈りをもって日本を見守っています。結束、チームワーク、冷静さ、隣人のために懸命に助け合う姿勢など、多くの称賛の言葉が寄せられています。日本人特有のこうした気質を、世界の人々は今まさに理解することとなりました。MSCでは、社員一人一人からの寄付に会社が同額を補う形で震災義援金を送ることにいたしました。日本がこれからの困難な状況から復興に向けて立ち上がるとき、より安全な日本の実現に弊社のシミュレーションやソリューションがお役に立ちましたらうれしいです。
The world watches with hope and prayers for Japan. People are now really just starting to comprehend the very special character of the Japanese people. Unity, teamwork, focus and unselfish effort are just a few of the words and phrases that are being spoken.At MSC, our employees and our company are making financial contributions to the relief efforts and we know that our simulation solutions will help to make Japan safer as it overcomes future challenges and points toward new opportunities.
■MSC CEO ドミニク・ガレロ(Dominic Gallello)氏
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