オートデスクは、同社のCAD新製品「AutoCAD 2012」と「AutoCAD LT 2012」を発表した。今回の主な強化テーマはコラボレーション機能
オートデスクは2011年2月21日、同社のCAD新製品「AutoCAD 2012」と「AutoCAD LT 2012」を発表した。出荷予定日は、いずれも同年3月16日で、価格については従来バージョンと同額。今回は両製品ともに、さまざまな視点におけるコラボレーションの機能を強化した。またパフォーマンスについては、前バージョンと比較して、初期起動が45秒から26秒に、2度目の起動は10秒から8秒まで縮まったとのことだ。
他社CADデータとのコラボレーションという観点で、マルチCAD対応を挙げた。メカCADのデータ形式については、AutoCAD 2012(LTも含む)の時点で、以下のデータが再利用可能だ。
こちらの3次元データはネイティブデータのままAutoCADに取り込むことができる。しかしAutoCAD内に取り込んだ時点では、アセンブリデータも1つのブロック(グループ化された形状データ:2次元の場合は線図データ)として認識する。
AutoCAD上で形状修正をするためにブロックを分解すると、基のパラメトリックデータを保持していない。今回からAutoCADシリーズのインストーラに組み込まれたダイレクトモデリングツール「Inventor Fusion Technology Preview」を併用すれば、他社CADデータもパラメトリック編集が可能だ(インストールの可否はユーザーが選択可能)。
サーフェス3次元モデル編集も改善した。併せて、3次元スキャナなどで取り込んだ点群データの処理力・表現力もよりアップ。これらはリバースエンジニアリングなどで有効な機能だ。
AutoCAD 2012(LTも含む)には、2010年9月に発表したクラウドの無料2次元CAD「AutoCAD WS」がプラグインしてある。AutoCADで作図した図面をオンライン上に登録しておけば、出先や移動中に図面を閲覧するだけではなく、修正も行える。ほかのユーザーと作業を共有することも可能だ。このサービスは製品版の代替ではなく、あくまで協調ツールとして提供するとのことだ。オリジナル製品と比べれば機能は非常に限られているが、スマートデバイスのiPadやiPhone(ともにアップル社)からも作図・修正が可能だ。
「もったいない度計算機」とは、オートデスクが同社セミナーで参加者に対し実施するセルフチェックだ。このチェックでは、AutoCADを使用するうえで基本的かつ重要な機能を使っているかどうか、あるいはAutoCADの基本思想を理解して使っているかなど確認していく。
セルフチェックのデータから、AutoCADおよびAutoCAD LTでは、全機能のうち20%しか使っていないことが分かったという。新機能には触れず、慣れ親しんだ古いバージョンの機能をそのまま使っている、あるいは誤った使い方を続けていることなどが原因のようだ。
そして、ユーザーの間で浸透していないのが「AutoCADのCAD標準」だという。「最も生産性に貢献する部分」とオートデスク プラットフォームソリューション 清水 卓宏氏はいう。
「(文書ツールの)Wordも、スタイル機能を使わないと生産性が上がりません。AutoCADも同じなのですが、多くの人が、スタイルやテンプレートを使いこなしていません」(清水氏)。
図面データを集中管理しCAD標準をコントロールする「シートセットマネージャ」も、2004年にAutoCAD 2005から実装されているのにもかかわらず、ユーザーへの浸透率はよくないという。こちらは今回、AutoCAD LTにも実装され、AutoCADとAutoCAD LT間においてもワークフローを共有可能とした。
シートセットマネージャの利点は、例えば以下である。
今後もユーザーに対し標準化のセミナーを開催したり、代理店に対しコンサルタント認定試験を実施したりなど、その復興に努めるとのことだ。
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