「ETロボコン2010」チャンピオンシップ大会 競技部門の模様をレポート! シーソー、階段、ミステリーサークル、ETロボコン史上最高の難所も!?
若手組み込み技術者の育成を目的として行われる「ETソフトウェアデザインロボットコンテスト」、通称「ETロボコン」での今年の最高峰を決めるチャンピオンシップ大会が2010年12月に開かれた。
2010年2月からの実施説明会、技術教育、試走会、モデル審査、地区大会を経て行われたチャンピオンシップ大会では、全国10地区、全343チームから選抜された上位40チームが集結し、“日本一”を目指して競い合った。同大会は、2010年12月1から3日の3日間、パシフィコ横浜で開催された「組込み総合技術展 Embedded Technology 2010」の併催イベントとして開催されたものだ。12月1日に行われたチャンピオンシップ大会 競技会(競技部門)では、1000名を超える来場者が集まり盛況なものとなった。
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⇒ | ETロボコン2010 |
当日の競技の様子をレポートする前に、ETロボコンとは何か、またレース内容についてざっとおさらいしておこう。
いまやエンジニアたちの熱き戦いの場としておなじみとなった同大会は、同一のハードウェア(走行体)に、UMLなどで分析・設計したソフトウェアを搭載し、指定コースを自立走行し、スピードを競い合う。ハードウェアありきではなく、“ソフトウェアの優劣を競う”ことを特徴とするコンテストであるため、競技の優劣だけではなく、分析・設計過程のモデリングも審査の重要ポイントとなっている。
ETロボコンは、2002年に「UMLロボコン」という名称で誕生してから今年で通算9回目を迎える。当初20チーム100名程度だった参加者も、いまや343チーム約1700名となり、さらに今年は、札幌、金沢、那覇が初めて地区大会開催地として加わるなど、大会が大きく成長してきたことをうかがわせる。
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⇒ | 組み込み技術者の熱き頭脳戦「ETロボコン2010」説明会 |
産学官連携協力により開催される同競技は、高校生以上のオープン参加型で、チームまたは個人での参加となる。2010年は343チーム中、企業からの参加が171チーム、大学・短大が73チーム、専門学校が22チーム、高専が14チーム、高校が9チーム、個人などが51名、特別枠3チームとなっている。その中から、チャンピオンシップ大会に残ったのは、企業26チーム、大学10チーム、個人3チーム、そして、高専1チームだ。
コンテストで行われるショート競技では、黒色/灰色のラインで描かれたレーンをリアルタイムで検出しながら自律走行するライントラッキングレースで、2チームごとに行われる。1周は約20mで、2回の走行(1回はアウトコース、もう1回はインコース)を行い、両方のタイムの合計で競い合う。
今年は、昨年までのレギュレーションからいくつかの変更点があった。まず、使用ハードウェア(走行体)がすべて「LEGO Mindstorms NXT」に統一されたことだ。
またトラックには、通過するとボーナスポイント(走行タイムより減算)を得ることができる“難所”と呼ばれる個所が数カ所設定されているが、ここも大きく変更された。アウトコースの難所には、大変高度なバランス制御が必要となる3D難所「シーソー」と「階段」、インコースには、2つの円形を組み合わせた「ミステリーサークル」、そして、両コース共通で高さ100mm以下の勾配がある「坂道」が用意されている。
コース全体が立体的になっているうえに、超音波センサを利用したミステリーサークルは、走行直前に4つの組み合わせの異なる通過ゲートからランダムに決定され、それに応じた走行を行うという大変難易度の高いものとなっている。
さらに、シーソー上で制止する“シーソー停止”は、「ETロボコン史上、最高の難易度といえるもの」と同コンテストの本部・技術委員長 西川 幸延氏(NECソフトウェア北陸)が述べるほどの難関だ。西川氏によれば、ETロボコンには、確実に完走するための「正確性」、速くゴールするための「性能」、坂道や難所を走破する「多様性」、環境の変化に対応する「柔軟性」などが求められるという。
予選地区大会では、難所を回避するチームのほか、チャレンジしたもののクリアすることができなかったチームも少なくなく、日本一をかけたチャンピオンシップ大会では、完走率や難所での成功率が勝敗を大きく左右する。
開会に当たり、同コンテスト 本部・実行委員長の星 光行氏は「ETロボコンは、高校生以上社会人まで、同じ条件でハンデなしでやっているものだが、近年では学生諸君の活躍がすごいなと感じている。この大会は、技術育成をテーマにはじめたものだが、教育とは、成果が出るまである程度の時間がかかるものと思っていた。それが、1年で大きな成果を出してくるので驚いている。モデリングもフローチャートも書けないところからスタートして、社会に出て即戦力となる人材へと育っている。今大会の参加者たちも皆、チームプレイでプロジェクトを成し遂げた結果を誇りに持ってほしい」と語っていた。
――いよいよ、レース開始。
競技は、参加40チーム20ペアに分かれて、第1ラウンド、第2ラウンドの2回のレースを行っていく。スムーズに1周できれば、40〜50秒程だが、コースミスや転倒、制限時間の2分を超えるとリタイヤ扱いとなってしまう。
“スタート”を切る瞬間は、見ている側さえドキドキする程の緊張感が漂う。トップバッターはさぞや緊張したことだろう。大会の第1レースを飾ったのは、南関東代表の「H22(キヤノンソフトウェア)」と東海代表の「クラっちWIN(エフ・シー・シー)」だ。インコースを走るチームが抽選くじを引いて、ルートが決まると「3、2、1、ゴー」でスタートだ。
インコースのH22、アウトコースのクラっちWINともに出だしは順調に進むものの、クラっちWINは、シーソーを通過、中間ゲートもクリアしたが途中でリタイヤ。H22は、中間ゲート、ゴールゲートまでクリアしたもののガレージイン(車庫入れ)はならず。無事に完走することとガレージインまでが、大変難しいレースだということを目の当たりにした第1戦だった。
競技前に、組込みシステム技術協会 専務理事 門田 浩氏が「見て楽しいという要素も必要だと思っている。応援者の方々も、ぜひレースを楽しんでほしい」と語っていた。その言葉どおり、その後に続くすべてのレースでは、それぞれの走行体が奮闘ぶりを見せ、競技そのものを楽しませてくれた。コース上には、日本各地の名産品が置かれているのだが、時に「舞妓さん」をなぎ倒し、時に「うな重」を道連れに横転しと、見ていて飽きることのないとてもエキサイティングなレースが続いた。
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