ユニダックス主催の「Atom E600 すぐに使えますセミナー」の中で、インテルは「組み込み市場向け製品戦略」をテーマに講演を行った。
2010年10月13日、ユニダックス主催の「Atom E600 すぐに使えますセミナー」が開催された。同セミナーでは、9月に行われた「Intel Developer Forum 2010(IDF 2010)」で正式発表されたばかりのAtomプロセッサ「E6xx」システム・オン・チップを題材にしたさまざまな講演が行われた。
本稿ではその中から、インテル マーケティング本部 エンベデッド&ストレージ製品・マーケティング プロダクト・マーケティング・エンジニア 廣田 洋一氏が講演を行った「インテル 組込み市場向け製品戦略」の内容について紹介する。
「クラウドに代表されるようなネットワークサービスを利用する製品は、現状PCやサーバが中心だが、それは氷山の一角でしかない」(廣田氏)。
講演の冒頭、廣田氏は今後あらゆる機器が何らかのネットワークサービスにつながり、進化していくことを強調し、「PCやサーバだけでなく、特定用途の組み込み機器に対してもIA(インテル・アーキテクチャ)を広く展開し、できるだけ多く利用してもらうことがインテルの使命だと考えている」と述べた。
インテルは以前から、「2015年にコネクテッド機器(ネットワークにつながる機器)が150億台になる」と唱え、PCやサーバ分野のほか、組み込み分野でも多くの製品を市場に投入してきた。廣田氏は「PCやサーバ分野では“ほぼIA”といえるくらい市場に浸透している。この輪をネットブックやタブレットPCへ。そして、さまざまな機器へ広げていく」と話す。
では、PC/サーバからさまざまな機器へとIAを展開しているインテルの製品戦略のポイントはどこか?
廣田氏は「シリコン・プロセス技術の開発」「アーキテクチャの強化」「新規市場、新規機能の開拓」の3つを挙げる。「x86というベースとなるアーキテクチャ自体は変わらない。しかし、それを強化・補助する機能がどんどん追加されている。それによりチップの高機能化が進む」とし、さらに「われわれは単純に製品を提供するだけではない。さまざまな市場でIAを使用してもらうための提案活動や市場開拓を進めている」(廣田氏)と話す。
本講演のテーマにある組み込み分野にフォーカスした場合、インテルはどんな戦略を打ち出しているのか?
インテルの組み込み分野での展開をひもといてみると、その歴史は長く「30年以上前から実績があり、30以上の製品セグメント、3500社以上の顧客に採用してもらっている」(廣田氏)という。いわゆる一般的な組み込み機器だけでなく、軍事/衛星や鉄道関連などでもIAが採用されているとのことだ。
「一般にはあまり知られていないが、PCのような単一のアプリケーションだけを狙っているわけではなく、組み込み分野においてもさまざまな機器で使用してもらうための施策を打ち出し続けている」と廣田氏。
インテルの組み込み向け製品のターゲットは「PCやサーバ技術を流用できる分野」と「より要求の厳しい組み込み分野」の2つに大きく分類することができる。
PCやサーバ技術を流用できる分野とは、半導体製造装置、工作機械、医療機器などの産業機器のほか、POS端末のようなPCの形はしていないが、中身は(ほぼ)PCといったような「PCっぽいアプリケーション」(廣田氏)を指す。こういった分野に対し、サーバ、デスクトップPC/ノートPCで展開してきた「Xeon」「Core」などの製品を流用し、展開している。
ただ、これだけでは低消費電力、低コスト、省スペースなどの組み込み分野におけるさまざまなニーズには応えられない(より要求の厳しい組み込み分野がこれに当たる)。そこで、この厳しい組み込み分野の要求に応える製品として、投入されたのがAtomだ。
廣田氏は「Atomが登場する以前はこうした厳しいニーズには応え切れなかった」と話す。では、Atomが登場したことで、すべての組み込み機器のニーズをカバーできるのか? その答えはノーだ。ただし、これまで満たせなかったニーズのいくつかをAtomで満たせるようになったことは紛れもない事実。Atomの登場は、IAがより要求の厳しい組み込み分野に深く浸透していくための大きな布石となったことは間違いない。
「Atomの登場で少し間口が広がった。また、IAが使われていなかった製品セグメントでも、今後Atomにリプレイスされる・できる部分も増えていくだろう」と語り、「今後もAtomは進化していく。現状、すべてのニーズをカバーするには難しいところもあるし、さらにチャレンジしなければならない点もある。しかし、従来よりも確実に使いやすくなった」と廣田氏は力強く述べた。
要求の厳しい組み込み分野におけるCPUアーキテクチャといえば、ARMやMIPSなどの存在を忘れてはならない。製品セグメントによっては、これらアーキテクチャが圧倒的なシェアを有し、PC/サーバ分野でトップを走るインテルも追う立場になる。
ここで廣田氏は、インテルの組み込み向け製品の特徴・強みについて、次のように説明した。
まず一番の強みとして「ソフトウェアの互換性」を挙げる。「Xeon、Core、Atomはすべてx86アーキテクチャ。例えば、Xeonで作ったソフトウェアはAtomで、Atomで作ったソフトウェアはXeonで必ず動く」(廣田氏)。短期市場投入やコスト競争の中、ソフトウェア開発もハードウェア開発と同様に、いかに早く・低コストで作るかが重要になる。x86アーキテクチャにより、1つ作れば基本的にはすべてで動作する。また時間軸の観点で見ても、過去・現在の資産から将来の資産まですべてをカバーできるというのはIAの大きな強みといえるだろう。
さらに、廣田氏が挙げたのは「製品の豊富さ」。ご存じのとおり、Xeon、Core、Atomの主なファミリーには10〜20の製品がある。例えば、ニーズに合ったチップセットを1つ決めさえすれば、性能・機能・コストにマッチしたCPUを載せるだけで、複数のボード製品を開発することができる。
また、製品発表から7年間の長期供給サポート、製品開発に関連した技術情報やツールの豊富さ、国内外の多くのパートナーによるサポート体制など、設計・開発者への「サポート力」を廣田氏はアピールした。
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