日本企業と世界トップ企業との違いがパテント調査で浮かび上がる。第1回は輸出競争が激化する鉄道インフラをリサーチ!
日本が強いはずと認識されている技術分野は果たして本当に優位に立てているのでしょうか。本連載では知財戦略の観点から、日本企業のモノづくりと企業力を検証、国際競争での真の実力を見ていきます。(編集部)
皆さん、こんにちは。日本技術貿易の野崎です。前回の連載「自社事業を強化する! 知財マネジメントの基礎知識」では、知的財産(略して知財・チザイ)をどのように事業に利用・活用していけばいいのか? という観点から6回にわたって知財マネジメントについて紹介しました。
今回の連載「知財コンサルタントが教える業界事情」では日本の競争優位性があると思われている産業・技術領域を取り上げて、世界市場における日本企業の競争優位性について知的財産面から検証していきたいと思います。
連載第1回の今回は“鉄道”を取り上げたいと思います。近年CO2削減の機運から世界中で高速鉄道インフラ整備プロジェクトが発表されており、日本企業も政府と一体となってプロジェクト受注獲得へ動いています。
アメリカではオバマ大統領が今後5年間で130億ドルを高速鉄道整備に充てることを発表しました。リオデジャネイロとサンパウロを結ぶブラジル高速鉄道整備プロジェクトの規模は約190億ドル、自国のGDPの半分に及ぶ560億ドルという南北高速鉄道プロジェクトを計画しているベトナム、さらには2020年までに高速鉄道網を整備する「4縦4横」計画を打ち出し総額5兆元を投資すると発表した中国など、日本円換算で数十億円から数兆円規模に至るさまざまなプロジェクトが世界各国で進行しています。
このような鉄道建設プロジェクト入札に名前が挙がるのがビッグ3と呼ばれる鉄道車両メーカー(シーメンス、ボンバルディア、アルストム)です。この3社で鉄道車両の世界市場シェアの約60%を占めています。このビッグ3へ米国General Electric(以降GE)や日本企業、そして韓国企業が挑む業界構造になっています(図1参照)。
最近は日米欧・韓国メーカーに加えて、中国北車集団や中国南車集団といった中国鉄道車両メーカーも市場での存在感を上げてきています(注)。
注:中国メーカーの動向はリンクの記事などが参考になります。
China to Invest in Argentine Railways, The Wall Street Jornal Online(全文閲覧には登録が必要)。
本記事では日米欧・中国・インド・ブラジルにおける鉄道関連特許出願の状況と、それらの国々においてビッグ3とGEおよび日本の主要鉄道車両メーカー5社に加えて、日本企業からJR東日本、JR東海、日本信号、東芝、三菱電機を、欧米企業から鉄道車両部品メーカーであるクノール・ブレムゼとWABTEC(旧ウェスティングハウス・エア・ブレーキ)をピックアップし、各社がどれくらい注力して特許出願を行っているのか紹介したいと思います。
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