以上、全体と技術要素別の出願状況について概観しました。レポートの最後に「まとめ」と「今後の指針」を示すことが重要です。今回のマクロ分析から、プレーヤーがある程度絞られていること、企業間でアライアンス関係が構築されていること、技術要素としては「操作・教示装置」に出願が集中していて制御系特許が少ないこと(そして、エンタメロボット社のコア技術である関節技術に関する出願も少ない)といったことが分かりました。
あとは、経営企画部で新規参入について判断してもらうために「今後の指針」、つまり自社単独での参入を目指すのか、他社とのアライアンスを模索するのか、大方針を定めたうえで、より詳細な特許読み込みを行う必要があると結論付けます。
最後にレポートの補足資料という形式でもいいので、図9のようにどのような分析条件で特許分析を行ったのかは残しておきましょう。
今回エンタメロボット社の例で9ページほどのサンプルレポートを見せていただきましたが、このぐらいのレポートを作成するのにどれくらいの時間がかかるものなのでしょうか?
非常にいい質問ですね。わたしが今回提示したレポートを作成するのにかった時間はおよそ5時間程度です。これには医療用ロボットのFタームである3C007AS35を探すところから、Fタームを利用して分類項目展開を行ったり、パテントマップを作成したり、パワーポイントでレポートを作成する作業すべてを含んでいます。
わたしは日ごろから特許分析・パテントマップ作成やレポート作成を行っていますので、セミナーを受講している皆さんよりも半分ぐらいの時間で完成できると思います。よって、標準的な時間としては10時間ぐらい見込んでおけばいいと思います。
10時間というと1日数時間を特許分析レポート作成に充てると、3〜4日ぐらいかかるということですね。なるほど、やっぱり結構時間がかかるものなんですね。
今回はFタームという既存の特許分類を利用して医療用ロボットの技術要素へ展開していますが、実際に特許を1件ずつ読み込んで技術要素へ展開していく場合はさらに時間がかかります。要求されている分析の深さにもよりますが、今回のようなざっくりとした依頼については、特に読み込みをせずに機械的に展開する方が効率的だと思います。
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