一方で今回発表されたglovia G2では、ユーザーインターフェイス(UI)の革新性も注目されているようです。
Silverlightを使ったグラフィカルなUIが実現したのは大きなアドバンテージだと考えています。
そもそもは4年ほど前から、ユーザビリティの高いUIへの改良を検討しており、さまざまなアーキテクチャによるシステムを検討してきた背景があります。
もちろんこれらの要件を満たすシステムを構築する際に必要となる工数も見積もったのですが、多くのケースでは「とんでもない」膨大な工数でした。かつ、既存のお客さまの稼働資産の移行性についても「単純ではない」ことが大きな障壁としてありました。これでは既存のお客さまに大きな負担を強いることになりかねません。われわれとしてはこうした選択はあり得ないものだったのです。その点、マイクロソフトの提供する.NET Frameworkをベースとしたシステム構築は、非常にメリットがありました。
「資産の移行性」「操作性」「SOA基盤」の3点を基準に選定を行い、2008年には次期バージョンで採用するアーキテクチャを.NET Frameworkに決定しました――富士通グループの中には当然、.NET Frameworkを利用したシステムの稼働実績も多数ありましたから、社内に蓄積された技術ノウハウも活用できますし、またそのメリットも理解できていましたから、もともと選択肢ではあったのですが――。
調べていくと、UIの作り込みには同じマイクロソフトが提供するSilverlightが良いという結論に達しました。他ベンダのUI製品もありましたが、バックエンドとの接続性の高さや機能面を考慮してSilverlightを選択したのです。
長期的に利用することを考えても、両製品ともマイクロソフトがエンハンスおよびサポートを行っていくわけですから、将来にわたる安定性も保証できます。
こうしたわれわれの提供する新しいソリューションと、お客さまの持つglovia資産や、さまざまなレガシーなIT資産を安全に接続するために、今回新たに「G2 タスクインターフェイス」と呼ぶアーキテクチャフレームワークを構築しました。
これにより、いままでの業務アプリケーションの情報や機能をそのままに、UIは、より使い勝手の良いものに移行できますし、SOAベースのシステム接続も可能になるわけです。いわば、新技術と旧技術を接続するブリッジのようなものです。
今回、glovia G2をリリースするに当たって、われわれが最も工数をかけ、丁寧に検証したポイントはこの部分なのです。
きちんと接続すること、安心して移行できること、利便性が高まること、これらすべての要件を満たし、満足いただける製品とするために、G2タスクインターフェイスがあるのです。
旧版のUIに慣れ親しんでいるオペレータに対しては何らかのフォローアップはあるのでしょうか?
新しいUIを用意したからといって、従来のUIに慣れ親しんでいる既存のユーザーに不便な思いをさせるわけではありません。当社では直感的な新しいUIのほかにも、従来品と同じ操作感で利用できるUIも並行して提供しています。G2タスクインターフェイスはこうした、レガシーシステムとの接続をサポートします。世界に500社1200サイト以上の、すでに動作している製品がありますから、既存の利用者に対してのフォローも忘れてはいません。
使い慣れた操作感を大切にしたいという現場の皆さんの声を重視することも、利用を定着させるためには重要なポイントです。パッケージベンダとしては、既存のお客さまに対してはより使いやすいものを継続して提供していきますし、新規のお客さまには、新規のニーズに合わせたものもご案内できるというわけです。
本社と拠点の間で、どの機能をどこでオペレーションさせるかは企業によってまちまちです。われわれの製品の、グローバル企業での使われ方は3つのモデルに大別できるでしょう。われわれの製品はそのいずれにも適用できるのです。
名前は出せないのですが、米国の大手メーカーさまの事例があります。その企業では、買収による事業統合を繰り返したことで、中のシステムがバラバラになってしまっていました――最近の日本企業も同様の課題を抱えているところが少なくないのではないでしょうか。
その企業では、本社に1つのシステムを設置、米国内の各拠点は本社のシステムを利用しています。海外は現地で法人化していますから、われわれの製品が提供するCCN(Company Control Number)という機能を使って、企業同士の接続を行っています。これは現地にシステムを置くのではなく、本社の単一のシステム上で複数の国の法人のERPを動作させるというものです。現地法人設立のたびにサーバやシステムを立てるのではなく、インターネット経由で本社に接続するのです。拠点の設置、移動などの動きに併せて迅速なシステム運用が可能な点も利点となるでしょう。
もう1つ、個別にサーバシステムを導入するケースもあります。あるお客さまの例では、本社には販売や調達、会計などの機能を置き、各拠点(生産拠点)には、生産管理機能だけを置いています。各拠点から上がってくる情報を基に本社側で調達を行っています。拠点と本社の接続はわれわれの提供するXMLベースのAPIを使って接続しています。今後、この連携部分はSOA接続インターフェイスになっていくと思いますが。
3つ目――このモデルは米国で紹介した際に“日本的”と評価されたものです――は、本社機能が1カ所にあり、製造拠点が国外にあるというモデルです。本社にも各拠点にもglovia G2を導入し、本社が調達や販売のオペレーション指示を行うというものです。
例えば、生産指示を各工場に送り、指示を出します。生産が終われば本社から輸送・出荷手配の指示を出します。この場合、営業系の指示も本社が統括します。
菊地氏 実はこれ、富士通の生産モデルの1つなのです。例えば、富士通では過去に、フィリピン工場でハードディスク装置の製造を手掛けていました(2009年2月に事業譲渡)。日本で展開していた製品もこの工場で製造したものを使っていました。この事業はまさに3つ目のパターンで運営していたのです。組み立て指示などもすべて本社側のオペレーションです。
さきほど説明したとおり、グローバルにも、そしてローカルにも対応できる機能と、SOA接続インターフェイスを提供していることで、このような世界中をつなぐクリティカルなシステムであっても、効率的に、かつ安全に稼働させることができるのです。
タムラ製作所さまの事例も参考になるでしょう。タムラ製作所さまの場合は、ホスト集中型の3つ目のモデルで運用されています。詳しくはコーポレートサイトの事例紹介にあるとおりです。タムラ製作所さまでは、すでにマスターデータもグローバルで統合されています。
このように、当社には海外のお客さま事例だけでなく、日本企業の海外展開を支援する場合も多くあります。
われわれは、富士通グループではありますが、米国での活動を中心としてきました。当然、米国および米国を拠点にグローバル展開している企業への導入事例も多数あります。日本よりも早くグローバル展開を進めた米国で蓄積した国をまたぐ製造に対する理解の深さ、ノウハウは、当社の大きな強みとなっています。一方で、日本企業を母体としていることからもお分かりになるように、日本的なモノづくりの在り方も理解しているつもりです。双方を擦り合わせた最適な解を提供できると自負しています。
編集部:ありがとうございました。
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glovia G2は、米国を拠点にするグロービア・インターナショナルが開発・提供するERPという点が大きな特徴だ。米国のグローバル企業の要求する、各拠点へのローカライゼーションと、グローバル標準のオペレーションへの対応にいち早く応えてきただけでなく、日本企業の海外進出でも数多くの実績を残してきており、日本企業ならではの感覚も併せ持っている。
いよいよ日本企業においても、買収や合弁による企業統廃合、海外生産・販売など、世界規模での迅速なオペレーションがいよいよ必須となってきたいま、同社のソリューションの発展に期待したい。
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