HDMI連載の最終回は、HDMI間のネット接続とオーディオ信号伝送を可能にするHDMI 1.4の新機能「HEAC」の測定を紹介
HDMI 1.4の新機能として、HDMIケーブルでイーサネットの信号を伝送するHDMIイーサネットチャネル(HDMI Ethernet Channel:HEC)とAudio信号をシンク機器からソース機器に伝送するオーディオリターンチャネル(Audio Return Channel:ARC)が追加されました。最終回の今回は、このHECとARCを併せた呼称であるHEAC(HDMI Ethernet and Audio return Channel)の測定についてご紹介します。
HEAC信号は、HDMIケーブルの2つのライン(UtilityとHPD)を用いて伝送されます。Utilityは、これまでのHDMIではReservedとされていたラインです。HEAC信号を伝送する際には、UtilityがHEAC+に、HPDがHEAC-になります。
HECは、100BASE-TX相当(125MSymbol/s,MLT-3:3値の信号)の差動信号です。HEC信号は、ソース機器からシンク機器、およびシンク機器からソース機器の双方向に同時にHEAC+/-ラインを介して伝送されます。
ARCは、IEC 60958-1で定義されるデジタルオーディオ信号で、シンク機器からソース機器に伝送されます。ARC信号は、HEAC+/-ラインを用いてコモンモード(同相)信号か、あるいはHEAC+ラインのみを用いてシングルモードで伝送されます。コモンモードのARC信号は、HEC信号と同時に伝送することが可能です。図1は差動HEC信号とコモンモードARC信号を同時に伝送している際の波形の例です。
これらの2つの機能は、HDMI 1.4aスペックのSupplement 2 HDMI Ethernet and Audio Return Channelで定義されています。
またHDMI 1.4では、HEAC信号に対応するケーブルとして、これまでのCategory 1、Category 2に加えて、HEAC対応のCategory 1、HEAC対応のCategory 2のケーブルが新たに定義されます。
HEAC信号を送受信する機器の評価には、HECとARC信号が正しく規格どおり出力されているかどうかの送信品質試験(Txテスト)、HECおよびARC信号が正しく受信できるかどうかの受信試験(Rxテスト)、さらにはHEAC対応のケーブルのテストが必要となります。
HEAC信号の送信品質試験では、HEC信号およびARC信号の電圧レベル、ジッタ、立ち上がり/立ち下がり時間などがスペックを満たしているかどうかを試験します。
HEAC送信品質試験に用いるオシロスコープは、HDMIのメイン信号であるTMDS信号測定に用いるオシロスコープと同じものが使用可能です。
オシロスコープ上で動作する自動測定ソフトウェアを使用することで、HEAC信号測定の各種パラメータの設定から、実際の測定、そして測定結果のレポートまで自動的に生成され、エンジニアの作業効率が飛躍的に向上します。図2は、アジレント・テクノロジーのHDMI-HEAC自動測定ソフトウェア「N5399B」の例で、テスト項目を選択しスタートボタンを押すだけで、自動的に測定が実行され試験結果のレポートが作成されます。また、N5399Bは、従来のN5399A HDMIコンプライアンステストソフトウェアからアップグレード可能です。
HEAC機器への接続は、HEAC対応テストフィクスチャおよびテストボードを利用します(図3)。従来のHDMIテストフィクスチャは、UtilityとHPDラインはリボンケーブルで出力されていましたが、125MbpsのHEC信号を正しく評価するために、新しいHEAC対応テストフィクスチャでは、HEACラインは同軸ケーブルで出力されています。
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