HDMIの測定と評価――TMDS電気レイヤ測定計測面から見るHDMI(3)(1/2 ページ)

デジタル家電/AV機器用のデジタルI/Fとして登場したHDMI。今回はTMDSチャネルの電気的なパラメータ測定について紹介

» 2010年02月18日 12時00分 公開
[アジレント・テクノロジー 今岡 淳,@IT MONOist]
計測面から見るHDMI アジレント・テクノロジー
高速なデジタル信号伝送は、製品の安定動作や異なるメーカー間での相互接続性確保のために、物理レイヤの検証が非常に重要となる。本連載では、デジタル家電/AV機器用のデジタル・インターフェイスとして登場したHDMIについて、測定という観点から、その概要と評価方法を紹介する。(編集部)

 今回はHDMIのTMDS(Transition Minimized Differential Signaling)チャネルの電気的なパラメータ測定についてご紹介します。TMDSは、映像、音声、制御情報が送信されるHDMIのメインリンクであり、最大3.4Gbpsのデータレートとなる高速デジタル信号ですので、その電気特性を測定することは非常に重要です。

 ソース機器、シンク機器、ケーブル、それぞれにTMDSチャネルのコンプライアンステストが定められ、相互接続性が保証されています。AVアンプのようなソース、シンク両方の機能を持つリピータは、ソース機器、シンク機器両方のテストを行う必要があります。

TMDSの測定と評価 − ソース機器

 ソース機器の評価では、オシロスコープを使用しTMDS信号の波形品質評価を行います。信号を正確に観測するために、広帯域オシロスコープと広帯域差動プローブが必要です。コンプライアンステストスペック(CTS 1.4)では、8GHz以上の帯域を持つオシロスコープが必要と記載されています。

photo 図1 ソース機器測定の構成例

 図1はソース機器測定の構成例です。ソース機器のテストポイントは出力コネクタ端であり、HDMIのプラグコネクタを持つテストフィクスチャで接続されます。HDMIスペックは、このテストポイント(Test Point 1:TP1)の波形を規定しており、ソース機器の評価は、出力波形がTP1の波形スペックを満足するかどうかを測定することとなります。

 TMDSのような高速な信号では、信号の終端条件で大きく波形が変わることもありますので、TMDS信号の理想的な50Ω 3.3Vプルアップ回路で正しく終端する必要があります。

 TMDS信号は、クロック信号とその10倍のデータレートを持つ3チャネルのデータ信号で構成されます。図2は、1920×1080p 59.94Hz/12bit deep color信号の波形の測定例です。この信号ではデータレートは2.225Gbps、クロック信号の周波数は222.5MHzとなっています。

photo 図2 TMDS信号の波形例

 コンプライアンステストでは、データ信号のアイパターン、クロック信号のジッタとデューティサイクル、信号の立ち上がり・立ち下がり時間、差動の+/−信号間のスキュー、チャネル間スキュー、ローレベルの電圧を測定します。中でもアイパターンは、TMDS信号の品質を総合的に評価する重要な項目です。

 TMDSは、クロック信号とそれに同期したデータ信号が伝送される方式ですので、オシロスコープではクロック信号を基準にしてデータ信号のアイパターンを評価します。具体的には、オシロスコープのソフトウェアクロックリカバリ機能により、クロック信号をHDMIスペックで規定された4MHz帯域の理想的な1st order PLLでリカバリし、リカバリされたクロックを10逓(てい)倍して基準タイミングとします。

 コンプライアンステストは、オシロスコープ上で動作する自動テストソフトウェアを用いることで、簡単にしかも測定パラメータなどの設定を間違えることなく測定することが可能です。図3はアジレント・テクノロジーのN5399B HDMIテストソフトウェアの例で、テスト項目を選択しスタートボタンを押すだけで、自動的に測定が実行され試験結果のレポートが作成されます。

photo 図3 HDMIテストソフトウェア

 HDMI 1.4では超小型のType Dコネクタ、車載用途のType Eコネクタが新たに定義されましたが、ソース機器のTMDS信号のスペックはコネクタに依存せず、すべて同じです。ですので、コネクタが変わっても、機器に接続するテストフィクスチャを変えるだけで、同じオシロスコープ、プローブ、ソフトウェアで測定が可能となります。

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