HEAC受信試験では、スペックに定められたHEC信号およびARC信号を機器が正しく受信できるかを試験します。そのため、基準となる電圧振幅、ジッタなどを正確に出力できる信号発生器が必要となります。アジレント・テクノロジーのパルス/ファンクション/任意波形/ノイズ発生器「81150A」(図4)は、このような基準信号を生成できる信号発生器です。
81150Aは、最大4値までの多値パターンを生成でき、出力する波形の立ち上がり時間、ジッタ、振幅を自由に設定可能です。これによりコンプライアンステストに定められたテスト条件はもちろん、さらにジッタ量を増やすなどフレキシブルな受信試験が可能となります。
HEC信号の受信試験では、イーサネットのARP(Address Resolution Protocol)パケット(図5)を利用し、81150Aのような基準信号発生器でARP要求パケットを含む基準信号を生成し、機器に入力します。試験では、機器がARP要求パケットを正しく受信し、ARP応答パケットを返すかどうかで判定します。ARP応答の確認には、送信品質試験と同じオシロスコープを使用します。
ARC信号の受信試験では、基準信号発生器でARC信号を生成し、機器が正しく受信できるかどうかを、機器からの音声出力を確認して判定します。ARC信号を受信する機器(ソース機器)は、コモンモードとシングルモードの両方を受信できることがスペックで求められていますので、受信試験も両方のモードをテストする必要があります。
また、HECとARCの両方の機能を持つ機器では、HEC受信試験時に干渉信号としてARC信号を、ARC受信試験時にはHEC信号を同時に入力して試験を行います。
HEAC対応ケーブルは、従来のTMDSラインの測定に加えて、HEAC+/-ラインの試験も必要となります。テスト項目は、スペックで定められている
です。
これらの測定項目は86100C+54754A TDRオシロスコープまたはE5071Cネットワークアナライザ(図6)を用いて測定が可能です。さらにE5071Cとオプションのスイッチボックスを組み合わせることで、TMDSラインも含めた自動測定システムを構築することも可能です。
以上5回にわたり、測定という観点からHDMIの概要とその評価方法についてご紹介しました。HDMIはテレビやBlu-ray Discレコーダなどのデジタル家電では事実上の標準インターフェイスとなっていますが、携帯電話や車載用機器への適用も期待されており、今後ますます重要になるインターフェイスです。本連載が少しでも皆さまのお役に立つことができれば幸いです。
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