ERP研究推進フォーラムの先の調査によれば、図3が示すようにERPパッケージのモジュール別の導入状況は、財務会計が43%と財務関連モジュールに極端なまでに偏り、販売管理16%、生産管理17%、物流管理10%と基幹系業務への適用が一向に進んでいないのが実態です。
日本のERPパッケージの導入実態として、財務モジュールへの偏重が浮き彫りになっています。
日本では当初から「統合型基幹業務システム」と意訳して紹介されてきたERPパッケージの、この極端なまでの財務関連モジュールへの偏りはいったい何なのでしょうか。
その要因としては次の点が考えられます。
こうした理由から、ERPパッケージの導入の実態は、統合システムではなく財務関連機能中心のモジュールとしての活用が主流となっており、その結果が、先の低いユーザー満足度、低いERP投資効果へとつながっていると筆者は考えています。
以上のことから、「日本企業の約4割がERPパッケージを採用している」にもかかわらず、財務関連モジュールに極端なまでに偏った導入実態を考えると、ERPパッケージの財務関連モジュールは普及したが、「ERPのコンセプト(図4に示すように、筆者はERPの特徴は、1. 統合化の推進、2. 計画・管理機能の充実、3. グローバル化への対応、そして4. 最新ITの活用の4つあるとし、これを「ERPクロス」と紹介している)とそれに基づくプロダクトである「統合基幹業務システム」としてのERPはまだ普及していないということができるでしょう。
グローバル化と激しく変化する今日のビジネス環境にあって、導入から10年近くが経過しているERPパッケージの多くの初期ユーザーでは、種々の要因から更新のタイミングを迎えてきています。
巨額なERP投資から経営上の効果を引き出す方法として、財務アプリケーション中心の導入という現状から脱却し、販売・生産・物流といった基幹業務への適用領域の拡大と本来の統合利用へ向けた動きが求められています。その引き金となると筆者が期待しているのが、このS&OPです。
「S&OPもしくはグローバルS&OP」を、いかに日本のマネジメントに広めるかが、日本企業が本当の意味でERPパッケージを使いこなす最後のチャンスとなると考えています(図4参照)。
S&OPはプロセスであり、それ自体、大規模なIT投資は必須条件とならないことは、本連載第1回『経営と現場は「超」シンプルにつなぐべし』で説明したところです。では、なぜS&OPの普及がERPパッケージの普及を促進させるというのでしょうか。
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