それではここで、最も基本的なブレーキ装置の構成部品について説明しましょう。後で何らかの参考にしていただくためにも、制動が行われるまでの圧力伝達順で紹介します。
後ほどそれぞれの詳しい機能を説明しますが、その前にこれら構成部品が果たしている役割を事前に全体把握していただくために、制動が行われるまでの簡単な流れをお伝えします。
まず「ブレーキペダル」を踏むことで力が生じ、その力をさらに倍増させるために「マスターパワー」に力が入力されます。
入力された力はマスターパワーによって倍増され、「マスターシリンダ」に出力されます。
マスターシリンダに入力された力によって、内部に充填(じゅうてん)されている「ブレーキフルード」に圧力が伝わり(油圧の発生)、各輪に向けて設けられている「ブレーキパイプ」を通じて「ブレーキキャリパ」に油圧が入力されます。
ブレーキキャリパはキャリパピストンを保持しているケースであり、ピストン背面へとブレーキフルードを導く構造になっています。つまり入力された油圧はキャリパピストン背面へと伝わり(パスカルの原理により増幅)、キャリパピストンは増幅された強い油圧により前方へ飛び出そうとします。
しかしキャリパピストンの飛び出す先には「ブレーキパッド」が待ち構えており、さらにブレーキパッドはブレーキディスクを挟むようにレイアウトされています(図2)。
キャリパピストンによって強い力でブレーキパッドが押されるということは自動的にブレーキディスクを挟むことになります。この時点でブレーキパッドとブレーキディスクとの間に摩擦が生じ、制動力となるのです。
それではここまでの全体把握を踏まえ、1つずつ各部品の機能について説明します。『ブレーキペダル』はメカニカルな部分とはいいにくいですが、いざ設計しようとするとき、全てのユーザーが違和感を覚えない位置関係にすることが非常に重要になります。
ブレーキペダルのイニシャル位置が高過ぎても低過ぎても駄目ですし、ストローク量も人の感覚に合うように考慮する必要があります。直近のニュースではとある車種のフロアマットとブレーキペダルとの干渉が話題になっていましたが、車の挙動に直接かかわる部分なだけに軽視することができない部品です。
次に『マスターパワー』について説明します。
マスターパワーは別名「制動倍力装置」と呼ばれている部品です。一般的な乗用車には「真空制動倍力装置」というエンジンの負圧を用いて内部に真空状態を作り、圧力差を用いてブレーキ踏力を補助するものを採用しています。
ほかにもエンジンとは別体のエアコンプレッサーを搭載しているトラックなどでは、その圧縮空気を利用した「圧縮空気式」が採用されています。
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