それは、「買った人が組み立てるものだから」。
プラモデルの製造では、組み立て工程の管理や、そのための人の雇用が必要ないため、人件費などの経費が安く済むという海外の生産拠点のメリットがそもそも生かせないというわけだ。もちろん同社は国産であることそのもののメリットも大いに生かしている。
開発から販売までの流れとしては、まずサンライズから来たメカデザイナの図案(意匠)を基に商品開発(企画)が始まる。そこには製品設計者も参加する。図案の段階では表面的な意匠の情報しかないが、「ここにはこういうエンジンが組み込まれているはずだ」「この形状の空力設計面での根拠は?」など、企画と設計ではその中身について、試作もしつつ、リアルにメカの詳細を具体的に詰めていく。ついにはそれを金型へ落とし込み、商品となるモノを実際に成形していく。
上記に携わる人たちが、ワンフロアに集結し、部署ごとの島に分かれて仕事をこなしている。それぞれの担当が1つ屋根の下、密に連携を取りながらガンプラを作る。なお製品出荷前のパッケージング(梱包)については、協力会社に委託している。
以降の回では、ガンプラの設計事情や金型設計との協調面などを話題としていく。ファンの夢と期待をかなえるべく、どのようにしてリアルにメカを詰めているのかがポイントだ。そこでは3次元CADやCAM、3次元プリンタも使われているが、産業機械やデジタル家電などとは、設計思想やカルチャーがガラッと異なる。設計で重要なポイントは、とにかく「アニメありき」であることであり、そこにすべてがつながっていく。
ところで、小さいころにガンプラを組み立てたことがある方は多いと思うが、大人になってから組み立てたという方は、それを趣味にしている方以外ではあまりいないと思う。また1970年代半ばまでに生まれた方々にとって、ガンプラとはパーツをニッパーで1つ1つ切り取り、接着剤で組み立てていくものだという印象が非常に強いのではないだろうか。
いまは、ガンプラの部品のすべてがスナップフィット(凸を穴に差し込むなどして、パチンと固定する)で組み立てられるようになっている。ガンプラでは1985年に初めて、スナップフィット式が一部の部品で採用された。その2年後の1987年にはすべての部品が対応した。しかも部品の各関節が動く状態でランナーに配置されているが、成形後の後工程で処理されたことによるものではない。
内部再現にこだわっているというMG(マスターグレード)とPG(パーフェクトグレード)のモデルでは、部品点数は数百点(MGは300点前後、PGは600点超)にも及び、手指の関節の1つ1つまでが動く。もちろん、こちらもランナーに配置されている状態から関節が機能している。
1988年には多色成形も登場している。それぞれ4種類の色が付いた部品が1つのランナーの中に納まっている(「いろプラ」)が、これは成形後に着色するのではなく、一挙に色分けして成形してしまうものだ。
しかも、これだけ高度かつ複雑な成形品なのにもかかわらず、
「解析(CAE)は一切やっていません」
と同社 ホビー事業部 製品設計チーム マネージャー 大榎(おおえのき)直哉氏は断言する。
その理由とは?
続きは次回で!(次回へ続く)
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