次に、インサイトに採用された部品について紹介する。
プリウスに高電圧関連の部品を多数供給している矢崎総業は、インサイト向けにはバスバープレート、ジャンクションブロックなどを供給している(写真9)。「『シビックハイブリッド』にもこれらの製品が採用されている」(同社)とのことで、電動自動車の高電圧系部品における同社の優位性が表れていると言えよう。
TDKは、ジャンクションブロック内に組み込む充放電の監視用電流センサー(写真9)、降圧用のDC-DCコンバータ(写真10)、駆動用モーターに使用されたネオジム磁石(写真11)を展示した。電流センサーは、駆動電圧が従来は±12Vだったところを、+5Vの単電源で駆動するように改良した。DC-DCコンバータは、従来品に比べて重量が半分程度になるなど大幅な小型化が図られている。ネオジム磁石は、磁石の結晶粒径を微細化するなどして保磁力を向上。高価な希少元素を用いないことで、価格低減に貢献した。
住友電気工業は、インサイトの駆動用モーターに採用された耐傷性の平角巻線を展示した(写真12)。モーターのローターに用いられる耐傷性巻線は、通常は丸線である。インサイトでは、平角巻線を採用することにより線占率を向上し、容積当たりのモーターの出力を高めている。
童夢は、風洞実験用の1/5サイズのインサイトを裏返しにして展示した(写真13)。これは、インサイトのボディパーツを改良することで、通常仕様よりも空力性能を高めて燃費を向上するプロジェクトに利用されている。裏返しにしているのは、車両下側のアンダーパネルが平坦になっていることを示すためである。
プリウス、インサイト以外にも電動自動車関連の展示が多く見られた。
東芝は、セダンタイプのハイブリッド車用に新開発した駆動用モーターと発電機を展示した(写真14)。米Ford Motor社のハイブリッド車「Ford Fusion Hybrid」に採用される予定である。同社は、ハイブリッド車向けに、同社の独自技術である「永久磁石リラクタンスモーター(PRM)」を用いた駆動用モーターと発電機を展開している。今回の展示品は、ローター内における磁石の配置を工夫することにより、モーターのサイズを増やすことなくトルクを向上している。
日立製作所は、ハイブリッド車用のリチウムイオン電池「LIB-IV」を展示した(写真15)。LIB-IVは、日立グループのハイブリッド車用リチウムイオン電池としては第4世代目に当たる。その出力密度は、同社従来品の1.5倍となる4500W/kgを達成している。
三菱重工は、電動自動車用の電動システムを展示した(写真16)。同社の電動システムは、2006年に発売された三菱ふそうトラック・バスの「キャンター エコハイブリッド」に採用されている。展示では、さらに効率を高めてモーターの回転数を8000回転/分〜1万回転/分とする技術を紹介した。
村田製作所は、イタリアMagneti Marelli社が開発したF1レースカー用のKERS(運動エネルギー回生システム)を展示した(写真17)。このKERSのインバータ回路の平滑用として、村田の大電力用セラミックコンデンサが採用されている。
オーストリアMagna Steyr社は、2009年後半から量産を開始する車載用リチウムイオン電池ユニットを展示した(写真18)。今回展示した製品は、商用車への採用が決定している。
ハイブリッド車と同様に、注目されていたのがクリーンディーゼル車である。2008年後半から電動自動車関連の技術に話題が集中しているものの、欧州市場ではクリーンディーゼルはなお有力な技術だ。
デンソーは、最高噴射圧を200MPaに向上した第3世代コモンレールシステムを展示した(写真19)。すでに、国内メーカーの欧州仕様車などに採用されている。
ボッシュは、ディーゼルエンジンの排ガスの後処理に用いる尿素水溶液噴射装置「DENOXTRONIC PC/LD」を展示した(写真20)。この製品は、乗用車向けのもので、ドイツDaimler社が2008年秋に北米で発売した「Mercedes Benz ML/GL320 BlueTEC」に採用されている。
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