ニッポンに圧勝したサムスンのグローバル戦略モノづくり最前線レポート(5)(4/4 ページ)

» 2008年09月09日 00時00分 公開
[上島康夫,@IT MONOist]
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体力勝負のQCD活動にしがみつくニッポン製造業に明日はない

 日本のいまの経済成長論というのは、相変わらずのイノベーション中心で、生産性を少しずつ向上していけば、経済は持続的に成長していけると考えている。これは非常に滑らかな経済成長論で、地方経済や中小企業、非製造業が取り残されてしまう。そこでこれからは、閉じたものづくりから開かれたものづくりへ移行する必要があるというのが、吉川氏をはじめとするものづくり経営研究センターの主張である。

 日本は現場発のQCDもいいが、もう少し「気」から「理」(戦略重視)へのシフトが必要だというのが吉川氏の考え方だ。韓国企業はこれまで「理」の世界で稼いできたが、いずれは中国やインドのものづくり企業に追いかけられ、こうした国と日本などの先進国との間に挟まれるサンドイッチ状態になってくるので、これからは日本と同じようにイノベーション型にシフトしてきつつあるという。

 日本は伝統的に体育会的な発想に基づく強い工場、現場主義を守っている。それもいいが、もう少し頭を使って競争相手が弱い市場を見つけて早く参入するという戦略があってもいいのではないか。韓国企業は「理」の世界なので、日本企業が進出していないBRICs市場をいち早く見つけられた。日本はBRICsに工場はたくさん持っていたが、現地向けの製品開発はしていなかった。そこに目を付けた韓国企業は、あっという間に独り勝ちになれたのだ。

 製品の競争力についても、日本は生産性や品質といった「裏の競争力」を重視するが、グローバルな人たちからすると、裏の競争力は理解されない。彼らが注目するのは顧客から見える「表の競争力」で、それは価格や利益率、納期などだという。

 こうした分析に基づき、吉川氏は日本のものづくりについて、次のような提言で講演を締めくくった。「ダーウィンの進化論では、生き残った生物は強いものたちではなく、環境に最もうまく適応した生物。ものづくり企業も、グローバリゼーションという荒波の中で生き残ろうとしたら、いままでの体質やプロセスや組織をすべて見直して、生き残り戦略を考える必要があるだろう。日本は裏の競争力は抜群に強いのだから、これから表の競争力を高められれば、世界に冠たる日本のものづくりが復活するだろうと確信している」。

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