で、私たち生産管理者はこれからどうするの?誰も知らない生産管理の苦悩を徹底討論(3)(2/3 ページ)

» 2008年08月11日 00時00分 公開
[上島康夫@IT MONOist]

営業の言葉を理解するテクニックを磨け

村上 生産管理担当者は在庫や納期といった本来の業務に精通するのは当たり前として、技術の人の言葉も分からなくちゃいけない。それでは、営業の言葉を理解することについてはいかがですか。

B氏 キャビンアテンダント(スチュワーデス)の法則というのがあるそうで、お客さんから、例えば「週刊○○はある?」って聞かれたら、ないのは知っていてもその場で「ありません」といわないで、まず雑誌棚まで確認しに行って、それから「申し訳ありません、いまはありません」と答える。こういうくだらない技術を覚えますよね、生産管理をやっていると(爆笑)。

一同 分かります!

B氏 営業から何かいってくるでしょう。「そんなもん、できるわけない!」って分かっているんだけど、そうはいわないで「分かった、少し検討してみるから5分くらい待ってくれない」といって電話を切って、何もしないで5分後に「ごめん、いろいろ現場とも詰めてみたんだけど、やっぱり無理そうだ。でも3日じゃ無理だけど、5日だったらできるよ」とかね。こういうテクニックって大事ですよ。

A氏 そうそう、すぐにできないと答えると「ちっとも前向きに検討してないじゃないか」なんて切り返されますから、その場で回答せずにしばらく寝かせます。

C氏 「できないっていうな!」とか、いわれますよね。できないという代わりに「3日後なら何とか……」と答えたり、「時間外勤務で追加コストを発生させてもいいならやります」とか。

B氏 営業担当者によっていい方を変えるテクニックは磨きましたね。単に謝ったって許してくれませんからね。あと営業の人間を見る目も養われますよ。この営業がこういういい方をしているときは、本当にこの期日でやらないとやばい、この営業のいうことは大体うそだから、まあいいや後回しで、とか。

A氏 うそで電話をかけてくる営業はさすがにいませんけど、お客さんにいわれたことをそのままいってくる営業は困ります。

B氏 お客さんのいっていることにいつもサバを乗せていってくる営業もいる。お客さんは10日後でいいといっているのに、5日後に欲しいとか。

A氏 営業がお客さんとちゃんと交渉していないのって、すぐに分かりますよね。

B氏 うん。直感的に、言葉遣いから分かりますね。

A氏 こっちが「その納期じゃできない」と抵抗したときとかに、同じフレーズを連呼する営業とか。説得力がまるでなくて「とにかくないんだ」とか、全然論理的じゃない。固有名詞とか現場の専門用語などが出てこないんですね。

B氏 説得力がない典型的なのは「そんなことをいったって、うちの会社としての信用がどうのこうの」みたいに、すぐ高次元の話に持っていこうとするパターンね。大体でかい話に持っていこうとしているときって、営業がサバを乗せている。「これを逃すとお客さんはどうのこうの」とか。でも、ちゃんとお客さんと交渉している営業は、「実はお客さんのところに何日分しかないんです」みたいな話を持ってくる。

A氏 そうそう、「何日後に3階の工事が始まるからどうこう」みたいに、話に具体性がある。

C氏 うちの場合、受注窓口が営業支援もしているのですが、お客さまのいったことをうのみにしてそのまま伝えてきたり、営業よろしく顧客満足度を振りかざして、というのはよくありますね。でも結局は事務方なので面倒くさいんでしょうし、決定権もないから、肝心な交渉は営業に振るしかない。でも営業が必ず数字の裏を取っているかというと……(笑)。

B氏 「急にお客さんのところの受注が増えて来週から生産量を2倍にするそうなんだ。だから……」とか、話の中に数字が入ってくるのは、ちゃんと話を詰めている営業だね。だからこっちも信用するんだけど、詰めてない営業は数字が返ってこなくて、精神論ばかり。

村上 コンサルティングをやっていても、やはり「頑張ります!」っていう人ほど成果は出ないですね。

B氏 最近はメールで連絡することもあるんですが、メールはやばい。営業のサバを見抜きにくくなった。営業自身も、自分でメールを打っていて、うそっぽいことが分かるんだろうね。だからサバを乗せているのに、理路整然とした数字を付けてくるんだ。それでだまされちゃう(笑)。

A氏 電話だと、いいかげんなことをいう人は勢いでしゃべっているだけだから何となく分かるんだけど、メールには勢いがないから、その辺が見えない。でも、そういう営業のメールは、変にCCがいっぱい付いていたりする。営業所長をわざと入れていたりとか。

B氏 生産管理として自分を守るためには、まず営業をよく知ることですよ。自分を守ることは、すなわち工場を守ることだから。

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