“マイコンの出現”が本格カーエレ時代の幕を開けた!!知っておきたいカーエレクトロニクス基礎(4)(2/3 ページ)

» 2008年06月24日 00時00分 公開
[河合寿(元 デンソー) (株)ワールドテック,@IT MONOist]

JFET、MOS、CMOSFETの原理や特性

 TrにはバイポーラTr(通常Trといえばバイポーラを指す)のほかに、FETがあります。電気伝導にNチャネルが関与する場合は電子だけ、Pチャネルの場合は正孔だけですので「ユニポーラ・トランジスタ」とも呼ばれています。前述したTrは電子と正孔ともに関与しますので「バイポーラ・トランジスタ」と呼ばれています。

 FETはゲート構造から、

  1. 接合型
  2. ショットキー型
  3. MOS型

の3つに分類できます。

 1.接合型は、「JFET(Junction FET)」のことで、高インピーダンス入力のTrとして使用されています。2.ショットキー型は、「MESFET(Metal-Semiconductor FET)」としてマイクロ波用で使用されています。3.MOS型の「MOS」とは“Metal Oxide Semiconductor”の略で、CMOSとしてロジックICやマイコンなどのLSIに使用されています。また、パワーMOSFETやMOSイメージ゙センサとして幅広く使用されています。

 図7(A)はNチャネルJFETの基本構造です。

図7 NチャネルJFETの概略

 N型層の中央にP型を埋め込んでいます。このPN接合面でダイオードと同じようにある程度の空乏層(注)ができます。VDSを印加しますとIDが流れます。ゲート−ソース間に逆バイアスを印加(ディプリーションモード)するとP型内の正孔は電極に、少数キャリアの電子はN型の方に移動してN型の少数キャリアの正孔と結合して空乏層が拡大します。するとN型内の電流通路(チャネル)が狭くなり、電流が流れにくくなります。従って、VGSによりIDが制御できるわけです。その静特性を図7(B)に、JFETの記号を図7(C)に示します。

注:P型半導体とN型半導体との境界面では、正孔はP型半導体からN型半導体へ、電子はN型半導体からP型半導体へおのおの拡散によって移動し、境界面で電子と正孔が欠乏した領域が形成される。この領域のことを空乏層という。

 図8(A)にNMOSFETの基本構造を示します。

図8 NMOSFETの概略

 P型層の両端にソースとしてのN型層、ドレインとしてのN型層を埋め込み、P型層の表面に酸化物(SiO2)接触させ、その上にゲート電極(Metal)を配置します。NはN型よりも不純物濃度を高くして抵抗を小さくした半導体です。今度は、順バイアスの小さいVGSを印加します(エンハンスメントモード)とP型層の正孔が反発して基板側に移動しますので、酸化物の界面には空乏層ができます。さらにVGSを大きくするとP型層の電子がVGSに引かれて界面に集まり、電子の層を作ります。この層はP型内の電子層ですから反転層といいます。この反転層によりドレインのN型とソースのN型がつながるので、VDを印加するとこのチャネルに電流が流れます。VGSが大きくなると反転層も大きくなりIDも大きくなります。従って、VGSによりIDが制御できます。この静特性を図8(B)に、NMOSFETの記号を図8(C)に示します。ちなみに、図8(A)のNMOSの構造のP型とN型を逆にしたのがPMOSとなります。このPMOSとNMOSの伝達特性を合わせて組み込んだものがCMOSです。

 続いて、CMOSインバータの基本構造と等価回路を示します(図9)

図9 CMOSFETの構造と等価回路

 シリコンMOSFETのゲート配線には、多結晶シリコンゲートが必要になります。CMOSの動作を図10に示します。

図10 CMOSロジックインバータの動作

 図10(A)は入力が“H(5V)”の場合、NMOSのゲート電圧は閾値以上になりますのでNMOSは「ON」になります。一方、PMOSのVGSは0Vですから「OFF」になります。従って、出力は“L(0V)”です。VCCからの電流はほとんど流れません。入力が“L(0V)”の場合にはPMOSが「ON」、NMOSが「OFF」となります。つまり、出力は“H(5V)”です。PMOSのソースからゲートには電流がほとんど流れないので、負荷がない場合はVCCからの電流もほとんど流れません。

 このようにCMOSロジックは、静止状態の消費電流が極めて小さいのが特長です。デジタル回路ではマイコンを含めて消費電流が最も小さく、適度な高速性を持ち、環境変動(電源、ノイズ、温度)に強いCMOSが自動車用として多く使用されています。また、アナログICとしては高機能アナログ回路の実現が容易なバイポーラが適しているために、同一シリコン上にバイポーラとCMOSを集積化したICも一部使用されています。

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