設計品質の1つ1つを具現化していくのが設計です。そして、そこには「優先順位」が存在します。これを「設計思想とその優先順位」といいます。これに関しては、第3回であらためて説明します。
では、先ほど、甚さんが提案した簡易設計審査をやってみましょう。今回は6W2Hを利用して以下の4つの項目で審査してみましょう(表1)。
設計審査って簡単ですね! 僕、入社以来、ずっとやったことがなかったんですよね。うちの上司は図面読めないし、いつも僕らに業務丸投げですし。……あ、そうそう、彼は『人に頼っちゃいけない』といっていましたよ? これを“成果主義”というんだとか……。
てんめーッ! いま簡単だとかいったかっ!? そんな生意気10年早えっ! エリカちゃんといますぐ交代しろー! いますぐぅっ! いますぐにーっ! ンガーッ!
そして、今回もまた良くんに、甚さんの鉄拳制裁が下ることとなりました。
アイタタタ……。ンモーッ! ですから、ポンポン殴るのだけはやめてくださいっていったじゃないですかーっ! 審査って、単なる技術説明会のことでしょ? 上司がいっていましたもん。『ISOさえ通ればいいんだ』って。
べらんめぇ! 日本企業も落ちたもんよぉ。設計思想もねぇ、設計審査もねぇってかぁ。おまけに設計審査が技術説明会とはなぁ。
設計審査は、ISO9001において設計プロセス上の必須行為となっており、そこでは「デザインレビュー」と呼んでいます。
また、筆者の経験から驚愕したのが、一部の日本企業で設計審査を実施していないことです。ISO9000*1を認証取得している関係上、「やっていません」ともいえないので、審査ではなく「技術説明会」を代用として開催しています。
注*1 ISO9000シリーズは、ISO(国際標準化機構)で制定した品質マネジメント システムの国際規格である。
説明会ですから、承認も却下もありません。設計審査員は不要で、出席者は評論家たちです。従って、3次元モデラーに対して、「まぁ、いいか」や「取りあえず試作で確認してみよう」「コストが高過ぎる」という定型の発言で終了です。
開発スケジュールの確認もたった5分で終了です。そのスケジュールも実現不可能な架空のスケジュールです。
最大の欠如は、審査対象物がないことです。これは企業として致命傷です。ここで表2をご覧ください。
設計審査とは、設計書を審査する“設計プロセス上の必須行為”です。設計書なき設計審査――設計書がない企業が生んだ理不尽な世界がここにありました。
さて、簡易設計審査の話に戻りましょう。先ほど良君が買ってきた100円ショップの現行商品(図3)と良君の“作品”を実際に審査してみました(表3)。
トホホ、僕の負けっすね。僕は確かに「いきなり設計」や、「いきなり造形」をやっていましたから。僕にとっての設計のコツは、まさに「3次元CADを忘れること」というわけか。身に染みました。
やけに素直じゃねぇかい! そんじゃ、100円ショップの灯油ポンプの設計思想を徹底分析してみようじゃねぇかい! 耳かっぽじって、死ぬ気で勉強しろってぇもんよ!
ガッテン承知! 甚さんカッコイイッ!
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