SELinuxは組み込みでその真価を発揮する!?組み込みイベントレポート(2/2 ページ)

» 2007年12月05日 00時00分 公開
[八木沢篤,@IT MONOist]
前のページへ 1|2       

Androidプラットフォームの
デバッグ環境

 京都マイクロコンピュータはET2007開催に先立ち発表した、ギガトレース対応「PARTNER-Jet Model 40」「イベントトラッカー」などを出展した(画像7)

 CPUクロックの高速化により、実行履歴を取れる時間が短くなってきたことを背景に、PARTNER-Jet Model 40では、トレース用のメモリを従来品の18Mbitsから8Gbits(1Gbyte)に増やした。これにより、数十億命令の実行履歴(時間にするとARM11 400MHzクラスで10秒程度)の保存が可能となった。さらに、デバッグだけでなく、まとまった処理の性能解析なども行うことができるという。

 また、イベントトラッカー機能はPARTNER-Jetの一部として動作するもので、JTAG ICEのCPUトレース機能との連携が可能。イベントトラッカーでCPU占有の長い個所を見つけて、そこからリアルタイムトレース機能を利用して実際に占有している関数などを表示できるというもの。

画像7 イベントトラッカーの画面(左)とPARTNER-Jet Model 40(右)

 さらに、同社は米グーグルが公開した「Android」のデバッグ環境についても展示(画像8、9)。説明員は「AndroidのSDKにはCPUや各種周辺ハードウェアをエミュレートするQEMUが含まれている。わが社で以前から進めていたPARTNERのQEMU対応を利用すれば、ひょっとしたらつながるのでは? と思い、急きょAndroid SDKのQEMUにパッチを当てるとともにLinuxカーネル 2.6.23をビルドし直した。準備期間は2日ほどだった」と話す。これによりAndroidプラットフォームのデバッグ(ARMプロセッサのステップ実行、トレース、OSのプロセス監視)が行えるという。

画像8 Androidプラットフォームのデバッグが行える

画像9 デバッグ環境の構成

関連リンク:
京都マイクロコンピュータ
http://www.kmckk.co.jp/
「PARTNER-Jet Model 40」のプレスリリース
http://www.kmckk.co.jp/news3/r071108_2.html
「イベントトラッカー」のプレスリリース
http://www.kmckk.co.jp/news3/r071108_1.html
業界初のLinux対応ICEが成功した理由 − @IT MONOist
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/0510/12/news112.html
Android
http://code.google.com/android/index.html
Google Android用携帯アプリ作成のための基礎知識 − @IT
http://www.atmarkit.co.jp/fjava/column/koyama/koyama09_1.html

組み込み向けSELinuxの成果をオープンソースコミュニティへ

 情報家電の常時ネットワーク接続の増加に伴う“セキュリティの脅威”に対処すべく、日立ソフトウェアエンジニアリングは、「セキュリティ強化技術 組込みSELinux」を発表した(画像10)。同製品は、Linux用のセキュアモジュールである「SELinux」を情報家電向けに改良したものだ。また、組み込み開発で使用できるようにクロス開発機能を実装したSELinux設定支援ツール「SELinux Policy Editor」も備えている。

メモ SELinuxについて

SELinux(Security-Enhanced Linux)は、米国家安全保障局(NSA:National Security Agency)が複数の企業とともに、セキュアなLinuxの実現に向け理論研究や開発を行ったものをベースとし、2000年にGPLで公開。SELinuxは、ディストリビューションの名前ではなく、LinuxカーネルにセキュアOS機能を付加するものである。詳しくは@IT Security&Trustの記事、

などを参考のこと。

画像10 SHアーキテクチャの評価用ボード(左)とSELinux Policy Editorの画面(右)

 現在普及しているPCサーバ向けのSELinuxはCPUやメモリを多く消費するため、組み込み用途への利用は難しいとされていたが、情報家電に必要な機能のみに絞り込み、ルネサス テクノロジの「SuperH RISC engine」向けに最適化することで、CPUリソースの消費量を最大10分の1程度、メモリ使用量も約10分の1に削減した。これにより、情報家電以外にもカーナビや携帯電話、ホームゲートウェイなどにも適用できるという。

 ちなみに、今回の開発成果の一部がLinuxカーネル、SELinux、BusyBox(組み込み向けのコマンドツール集)のオープンソースコミュニティに採用されたそうだ。

関連リンク:
日立ソフトウェアエンジニアリング
http://hitachisoft.jp/
「情報家電向けSELinux」のプレスリリース
http://hitachisoft.jp/News/News481.html
日立ソフト、「軽くて簡単」な情報家電向けSELinuxを開発 − @IT News
http://www.atmarkit.co.jp/news/200711/14/selinux.html
出荷状態のままで使用するユーザーもいるんです! − @IT MONOist
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/0711/13/news136.html

低消費電力で高性能を実現した 「UniPhier 4M」

 松下電器産業は、携帯電話用UniPhier(ユニフィエ)システムLSI「UniPhier 4M(MN2CS0036)」を出展した(画像11)。同社のデジタル家電統合プラットフォームUniPhierのアーキテクチャに高画質化技術と低消費電力技術を搭載し、携帯電話向けに最適化したものだ。これにより、高画質ワンセグ視聴や高性能グラフィックス描画、PC動画再生、GPS機能などを1チップで実現できるという。

 「1世代前のUniPhier 3Mは、NTTドコモのP903iやP904iシリーズで搭載されているが、UniPhier 4Mではさらなる携帯電話の高機能化に向けて、消費電力はそのまま(3Mと同等レベル)にWVGA対応やグラフィックス性能を強化した」と説明員は話す。パッケージサイズは14×14mmでサンプル出荷は2007年12月を予定している。

画像11 「UniPhier 4M(MN2CS0036)」は2007年11月28日発売のP905iに搭載

関連リンク:
松下電器産業
http://panasonic.co.jp/index3.html
「UniPhier 4M」のプレスリリース
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn071108-2/jn071108-2.html
前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.