ゆみ「なぁるほどぉ〜、図面に記載する寸法って『自分がチェックした』という証拠なんですねっ」
龍菜「そうだよ。だから、私は検査した結果を記載した図面が添付されていないモデルは信用しません。だって、図面がないということは『ノーチェックで3次元モデルだけを作った』ということでしょう?」
ゆみ「じゃ、私たちがやっていることも同じなんですね」
龍菜「この画像(図3)(図4)を見てごらん?」
ゆみ「これは?」
龍菜「学生と社会人を集めて、設計セミナーで2足歩行ロボットをやったときの画像なんだけど、モデルを作成しながら、その都度検討図を作成しているのが分かるかな?」
ゆみ「こんな単純なモデルの時点から、検討図を作るんですね。最初から図面を作成しておけば済む話かぁ……」
龍菜「そういうこと! 3次元CADの製図機能を使わずに、ほかの2次元CADで作図を行うなんて、愚の骨頂(ぐのこっちょう)だね。図面の使い方を間違えているよ」
ゆみ「分かりました。あの、図面に関連して聞きたいんですが、設計変更の履歴とかはどうやって残したらいいんでしょう? 2次元CADだと、△マークを記載したり、古い形状の上に×を付けたりして、後で分かりやすいようにしているんですけど」
龍菜「これは、簡単だよ。基本的には、3次元モデルと図面は常に最新となるように更新しておくんや」
ゆみ「龍菜さん、大阪弁が……」
龍菜「あかん、あかん。調子に乗ってくると地が出てしまうな」
ゆみ「私は好きですけど、当たりが柔らかくて」
龍菜「じゃ、あまり気にしないでいこうかな」
ゆみ「話は戻るんですけど、常に最新のデータが見られるのはいいとして、変更する前の形状はどうだったかなぁ〜と思ったときはどうすれば?」
龍菜「理想は、変更前の3次元モデルと図面を常にバックアップしておくことなんだけど、実際問題として、時間と費用が掛かり過ぎますね」
ゆみ「潤沢なお金と人間がいればいいですが」
龍菜「だから、過去の履歴は図面だけで保管しておきます。出図の都度、PDFなどで図面を出力しておけば、変更履歴は残せますよね」
ゆみ「なるほどですね」
龍菜「特殊な分野では、データを作成した時点の3次元CADソフトのバージョンとか、それが動作するパソコンとかもセットで残しておく、みたいなことも行われているようですが、民生機器分野では図面で変更履歴を管理しておくだけで十分だと思いますよ」
ゆみ「しかし、考えてみれば、設計で使われているCADソフトって、ほとんどが海外製ですよね。大丈夫でしょうか?」
龍菜「そうやねん! 『ものづくり日本』とかいうけど、ツールの部分は海外メーカーの手の内やね。もっとも、ホントに頭を使う部分で勝負すればいいだけなんやけどね」
ゆみ「私なんか、ツールに振り回されているかも」
龍菜「それは『モデリングのコマンドに振り回されている』ということだと思うよ。コマンドをたくさん覚えれば、3次元CADを使いこなせるようになる……なんて、思っていませんか?」
ゆみ「今日の話で『そういうことではないんだな』とは思いましたが、実際、コマンドの使い方も下手なんだと思います」
◇
次回は、モデリングのことに焦点を当ててみよう。どうなる、ゆみさん! (次回に続く)
西川 誠一(にしかわ せいいち)龍菜
1956年生まれ。キャディック 取締役 最高技術責任者。1999年、三洋電機退社後、多くの企業で3次元CADを活用した設計プロセス教育、およびコンサルティングを行っている。Webサイト「龍菜」では、「重要なものを見抜けば、世の中にモデリングできないものはない」というキャッチフレーズで、多くのモデリングテクニックも公開。
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