新事業領域は、トヨタ自動車が自動車メーカーから「モビリティカンパニーへのモデルチェンジ」を果たすために必須のものだ。モビリティカンパニーへの種まきでは、自動車という枠にとらわれず、AI(人工知能)、ロボティクス、宇宙、革新エネルギーなど、世界中から将来有望な技術やビジネスシーズを探索し、約5100億円の資金枠で投資を行っている。足元での協業先は100社を超える規模に拡大した。
これらの種まきを通じて見いだしてきた技術とノウハウを、トヨタ自動車が培ってきた技術や現場力と組み合わせ、新たな事業へとつなぐことが新事業領域における重要なミッションとなる。具体的な動きが始まっているのがロボティクス事業だ。
宮崎氏は「ロボティクスでトヨタが最も大切にしているのは、人の可能性を広げていくことだ」と強調する。AIやロボットは、人を置き換えるのではなく、人の能力を拡張するためにあり、ロボティクス事業においても「自分以外の誰かのために行動、チャレンジする人を助ける」ことで、豊かな暮らしに貢献したいと考えているからだ。
ロボティクス事業ではFAと生活の2つの領域で事業を展開する方針である。事業化で先行するFA領域では、ロボットを活用した「作業現場の生産性向上」と「働く人のやりがい向上」を目的に、現場の良質な匠のデータを活用してロボットを一気に進化させる方針だ。
FA領域においてトヨタ自動車の強みになるのが「トヨタ生産方式」「多様な現場」「ハードウェア」「ロボット基盤モデル」「Arene」「工場管制プラットフォーム」である。
まず、「トヨタ生産方式」については、「徹底的にムダをなくした上で自動化することが、ロボティクス実装の1丁目1番地であり、それは、ロボットを通じたトヨタ生産方式のデジタル化と自動化を意味する」(宮崎氏)とした。「多様な現場」では、トヨタ自動車が世界に展開する60の工場で1.8万人の匠技能者が日々改善に取り組んでおり、他の追随を許さないこれらの現場の良質なデータを活用してロボットの進化を一気に進める。そして、QDR(品質、耐久性、信頼性)に優れる「ハードウェア」とロボットが効率よく匠の技を学ぶ「ロボット基盤モデル」が信頼性の高いロボットの開発と生産を支える。さらに、SDV(ソフトウェアデファインドビークル)や自動運転の開発で培ってきたソフトウェアプラットフォーム「Arene」の活用、ジャストインタイム生産と交通管制を掛け合わせた「工場管制プラットフォーム」の導入によって、工場全体で効果的にロボティクスを実装できるとする。
FA領域の事業化に向けては、トヨタ自動車グループ内でのインナー活用が先行することになる。トヨタ自動車、グループ企業、仕入先などにわたる2028〜2040年累計のインナーFA需要の想定規模は、ロボット導入台数でトヨタ自動車とグループ企業で15万台、仕入先で25万台の合計40万台に上る。また、老朽設備更新に向けた投資が年間で1兆円の規模に達する見込みで、そこでロボットの導入も進む見通しだ。宮崎氏は「老朽更新ニーズという『コスト』から、新たな事業を育てる『オポチュニティ』に転換する」と説明する。
このFAインナー需要を起点に技術や人材を育て、製造業他社/他産業の顧客への外販、さらには生活領域の事業化につなげて、2030年以降に事業を拡大基調に乗せたい考えだ。
2030年以降にロボティクス事業の売り上げを着実に伸ばしていけるように、2027年1月に全社直轄組織として「トヨタロボティクス」を新設することを決めた。組織長は、トヨタ自動車 執行役員兼CPO(Chief Production Officer)の志賀武文氏が兼務し、社内に分散するロボティクス関連の知見、人材、機能を結集するとしている。
フィジカルAIとヒューマノイドの可能性、PFNの見立てとトヨタのアプローチ
AIバスケロボットが立ってるだけ!? トヨタの展示ブースの狙いは何か
トヨタは中東情勢影響で6700億円の減益見通し、稼ぐ力の強化やロボティクスで対抗
トヨタ自動車新社長の近健太氏は「稼ぐ力」を強化へ、佐藤恒治氏は“CIO”に
トヨタの米国関税影響は通期で1兆4500億円も、HEV好調で業績見通しを上方修正
2025年度も減益予想のトヨタ、先を見通せずとも「軸をぶらさずじたばたしない」Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
モビリティの記事ランキング
コーナーリンク
よく読まれている編集記者コラム