ヤマザキマザックは「JIMTOF2026」において、ブース内セミナーを開催。本稿では、その中で政策研究大学院大学 特任教授の西垣淳子氏と、ヤマザキマザック 上席執行役員 商品開発本部 副本部長の澤田洋祐氏が行った「製造業の『秘伝のタレ』はどこにあるのか?」の内容を紹介する。
ヤマザキマザックは「JIMTOF2026(第33回日本国際工作機械見本市)」(2026年10月26〜31日、東京ビッグサイト)において、ブース内セミナーを開催。本稿では、その中で政策研究大学院大学 特任教授の西垣淳子氏と、ヤマザキマザック 上席執行役員 商品開発本部 副本部長の澤田洋祐氏が行った「製造業の『秘伝のタレ』はどこにあるのか?」の内容を紹介する。
AI(人工知能)の進展などにより、製造現場でもさまざまなデータをAIに学習させ、活用しようという動きが広がっている。しかし、AIの活用が進み、製造現場でのさまざまなノウハウを再現できるようになったとしたら、製造業の強みはどうなってしまうのだろうか。
その1つの解として、西垣氏は京都府宇治市のHILLTOPの例を挙げる。西垣氏は現在MONOistで連載「製造業“X”探訪」を展開しており、その第8回でHILLTOPを取材したという。
「HILLTOPでは結果としてAI活用を含むDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めているが、AIが出発点ではないとしている。『人が面白いと感じることをする(新しいことに挑戦する)』ことを追求し、1回やったことは機械に任せていくというサイクルを実現するため、AIを業務に組み込んだ。AIを組み込んだことで挑戦へのサイクルは早まり、学習の範囲も広がったという。このサイクルが重要だ」と西垣氏は説明する。
澤田氏も同調する。ヤマザキマザックでは、マザトロールプログラムを中心に製造現場でフィジカルAIを実現する取り組みを進めている。「製造現場の暗黙知を形式知化するためには業務として何をやったのかを把握することが重要だ。マザトロールプログラムは何をどう加工するかの記録が詳細に残っている。その加工内容は各社固有の資産であり、競争力につなげることができる。そして、その学習結果を次の加工に生かしていくループを構築できる。この学習の仕組みが中核だと考えている」と澤田氏は述べる。
ヤマザキマザックでは、製造現場でのAI活用において、事前に同社内のデータで基礎学習をさせた「マザック基盤モデル」を用意し、納入時に顧客企業のデータを用いてチューニングし、ベースとなる顧客固有モデルを構築する計画だが、澤田氏は「その後、そのモデルを実際に工場で使いながら学習していくことで、他のどこにもない顧客工場固有モデルを育てていくことができる」と語る。
暗黙知を形式知化することで競争力の源泉を他社に奪われる可能性もあるが、「各工場、各工程、各機器の加工条件はそれぞれ固有のものであり、他の工場などでそのまま使っても賢く作業させることはできない。とがっているものだからこそ価値があるもので、平準化されるとその価値を失う」と澤田氏は説明する。
こうした点からも個々の加工技術に加えてそれを洗練させる「学習システム」こそが企業の競争力につながるといえる。西垣氏は「HILLTOPもヤマザキマザックも、現場や基盤に違いはあっても、実加工から得た知識を次の加工や判断に生かすことを繰り返し、企業としての競争力につなげる構造は同じだ。競争の焦点は個々のAIモデルから学習システムへと移ろうとしている。導入後に賢くなり続ける能力が重要だ」と強調する。
さらに西垣氏は優れた「学習システム」を構築するための以下の5つのポイントを示す。
澤田氏は「当社のAIエージェントを展開するまでには約2年の時間をいただくが、重要なのはこれらの仕組みや加工データだ。その準備を進めていただくことでAI時代にすぐに価値を得ることができる」と訴えている。
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