日本のモビリティ産業は「変化」できるのか:Japan Mobility Show Bizweek 2026(3/3 ページ)

» 2026年10月30日 08時30分 公開
[坪田澪樹,MONOist]
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「共創」で物事に取り組む上で大切なマインド

 セッションの途中では、共創で事業を進める上での「共通化」と「競争」の切り分けについても議論が交わされた。佐藤氏は「共通化を目的にしないことが大事である。経営資源には限りがあるため、強みを伸ばす競争をすることでプライオリティが決まる。そして、そこで出てくる共通化すべき部分を本来は共通化することが大事である。共通化を目的にしちゃうとゴールが間違ってしまうと思う」と発言。続けて「自工会の取り組みでも『OEM14社は徹底的に競争しようぜ』という方針である。もうホンダとトヨタなんかバチバチですよ」と話し、会場の笑いを誘った。

 このような背景を含めて佐藤氏は「現場のノウハウ/暗黙知とフィジカルAIの関係はものすごく矛盾をはらんでいる。トライ&エラーで失敗したことこそがナレッジであり、だけどナレッジを得ることができるプロセスはAIに託していくとなった場合、人間はどうやって成長するのか、ナレッジをどう積み上げるのかという視点が大事になる」と説明する。

 この部分に対して、野呂氏は「AIがどんどん作業を自動化し、シミュレーションによって人間よりも学ぶ速度が速くなっている中、現場に出ることが大事だと思っている。実際に現場で体験することにより、そこから得られるモノから新しいモノを生み出すというプロセスが今の若者に求められているのではないか」と述べる。

 一方、滝野氏は「もう私は『競争派』です。歴史を振り返ってみても、最初からコンソーシアムのような形でイノベーションを起こしたというのは、まだ40年しか生きていないが、私はあまり見たことがない。中国などがすごく伸びているのは、毎日生きるか死ぬかの環境で、24時間突貫工事をして私達を追いかけているからである。最終的には共通化が必要な部分を見つければ共通化し、そうでなければ勝ったところがドミナントになる。このような“競争原理”がやっぱり必要なのかなと思っている」と語る。

 佐々木氏からの「これからは業界を超えた共創がどんどん出てくると思うが、モビリティ業界で注目している分野はあるのか」という問いに対し、三部氏は「自動車だけで完結するものはない。例えば、通信系の企業とのコラボレーションや、エンターテインメントみたいなつながりも考えると、さまざまな異業種との組み合わせで新しい価値を顧客に提供できると思っている。この部分では今まで以上に日本企業は変わっていくと思っており、われわれも変えていかなければならないと認識している」と強調する。

セッション中の様子。左からトヨタ自動車の佐藤恒治氏、Mujinの滝野一征氏、PIVOTの佐々木紀彦氏

 話題は変わり、「会社(業界)を変えていく中で苦労している点は何か」という佐々木氏の質問に対して、三部氏は「われわれはいかにスピードを出すかというのが一番大きなテーマである。世の中の変化に対して本当に追従できているのかというと、なかなかできていない部分も多々あり、この辺りをいかに変えるのか。例えば、社内にあるルールみたいなものはいったん壊さないとその先に行けないという部分で、ゼロの状態から始めることができるとやりやすいが、何十年にわたってできてきた(積み上げてきた)ものがあるため、これを“もう捨てろ”といわれてもすぐには捨てることができず、この辺りが大企業としての悩みである」と回答した。

 佐藤氏は「モノづくり産業のリード役/けん引役としてモビリティ産業を引っ張っていかないといけない。大事なのはどれだけソフトドリブンな世の中になったとしても、やはりソフトが生み出す価値はアクチュエーションの能力を超えない。ハードウェアの緻密なモノづくりや品質の高いモノづくり、現場力をしっかりと高めていく努力を続けることが根幹に必要である」と語る。

 続けて、「産業を跨いだ取り組みが多くなり、エネルギーが多様化していることがモビリティの多様化の原因になっているため、エネルギーとモビリティの関係性をよく見て、地域に特化したエネルギーに対するソリューションをしっかり持つ必要がある。自工会が掲げている『マルチパスウェイ』というキーワードは、エネルギーの多様性にモビリティの多様性で応えることで、それが社会基盤になっていくということである」と述べた。

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