こうしてデータ基盤が整った上で進められたのが、DXの第二章となるAI配車最適化システム「aIDEM(アイデム)」の導入である。aIDEMは単一のAIではなく、複数の技術を組み合わせて構成されている。具体的には、売り上げやタンクローリーの容量目標率など複数の情報を入力データとし、「需要予測AI」「計画立案(数理最適化モデル)」「配車最適化(数理最適化モデル)」の3つの機能を通じて、考慮すべき条件を網羅しながら配車計画を作成/出力する。配車担当者はその出力結果を確認し、現実のイレギュラーな事象などがあれば調整と再立案を行い、最終的な配車計画を確定させる、という仕組みだ。
友野氏は「これら一連のシステム化を単なる『AI配車』の一言でまとめてはいない。AIが案を出し、人が確認や調整をして最終判断を下すという『人とAIの融合』が、aIDEMにおいて最も重視した点だ」と語る。システムが熟練担当者の実務知見を反映しつつ計画品質の平準化を進めることで、担当者はゼロから計画を作る作業から解放され、より高度な全体最適や例外対応といった本質的な判断に時間を費やせるようになるという。
aIDEMの導入により、配車計画の作成時間は全国平均で約23%削減された。また、時間短縮だけでなく、AIによって複数案を瞬時に比較できるようになったことで、計画品質の平準化や属人性の低減といった効果も得られている。担当者がゼロから計画案を作成する手間が省けたことで、より本質的な判断や例外対応に時間を費やせるようになり、結果として配車以外の業務負荷軽減にも寄与しているという。
友野氏は、「システムを導入して終わりではない。実運用を通じて初めて見える課題があり、現場で使い始めてからが本格的な改善のスタートとなる」と指摘する。同社は現在も、配車精度の向上や積載効率の改善、UXの向上、位置情報を活用したシステム連携の高度化など、実績に基づく継続的なチューニングを進めている。事業部門としては、最終的に物流のフルDXを目指している。
これまでのDXによって、データの取得や可視化、個別業務の最適化は着実に進んだ。しかし、市場や物流環境がさらに複雑化する中で、意思決定に求められる情報量やスピード、深さは大きく変化している。友野氏は、今後の論点は「AIを導入するかどうか」ではなく、「AIを前提に仕事をどう組み直すか」であると指摘する。
今後は、AIを中核に据えて業務や意思決定の在り方そのものを再設計する「AX(AIトランスフォーメーション)」へと歩みを進める。その本質は単なる作業の効率化ではなく、意思決定の質とスピードを向上させ、人間の知恵を超えた拡張性を持つことにある。
ここでも重要なのは、人が不要になるのではなく、人の仕事の中身が変わるということだ。全てをテクノロジーで解決しようとするとシステムが肥大化し、かえってバランスを欠く懸念がある。そのため、あえて人の知見で支える領域を残すことが、現時点での最適解だという。
「AXとは、人とAIの役割を再設計することだ。入り口の目的設定を間違えず、現場と一緒にシステムを作り上げ、人とAIの役割を最適に設計する。これが本プロジェクトを通じた最大の学びである」と友野氏は語り、講演を締めくくった。
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