CLO(物流統括管理者)体制を構築し、物流改革から経営変革へ挑む先進企業を追う本連載。第1回は花王のCLOに就任した森信介氏に、「製配販」の分断を打破し、現場力を全社の経営戦略へと昇華させる、改革の最前線を聞く。
改正流通業務総合効率化法の本格施行に伴い、荷主企業にはサプライチェーン全体の効率化に向けた抜本的な変革が迫られている。とりわけ、年間貨物取扱量が9万トン以上の「特定荷主」に対しては、物流統括管理者(CLO:Chief Logistics Officer)の選任が義務化され、物流を経営戦略の中核として主導することが求められる。そこで本連載では、単なる法制度の義務対応にとどまらず、率先してCLO体制を確立し、物流改革を起点とした経営変革に挑む先進企業の取り組みを追う。
第1回目は、早くから自動化機器への投資による倉庫自動化や、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進してきた歴史を持つ花王において、花王 執行役員 ロジスティクス部門統括 CLOの森信介氏に話を聞いた。
大手物流会社のドライバーからキャリアをスタートし、2024年に花王の執行役員に就任した独自の経歴の持ち主だ。CLOが主導する「製・配・販」の壁の壊し方、そして現場の実態に即したデータ駆動型の物流改善がもたらす経営価値に迫る。
MONOist 花王へ入社される前は、長らくヤマトグループでキャリアを積まれてきたと伺っています。
森氏 ヤマト運輸に入社したのが1997年のことで、最初の5年ほどはセールスドライバーとして現場を経験しました。その後、持株会社であるヤマトホールディングスへ移り、国内最大規模の「羽田クロノゲート」をはじめ、東名阪における4つの大型物流ターミナルの立ち上げプロジェクトなどに携わりました。2018年から2024年にかけてはヤマトロジスティクス 取締役常務執行役員やヤマト運輸 執行役員などを務め、縁があって2024年10月に、執行役員 ロジスティクス改革担当として花王に着任しました。
MONOist 花王はメーカーでありながら、自社で卸物流まで担う独自の体制を敷いていますは、どのような特徴がありますか。
森氏 現在、国内には10の生産工場と計31拠点の物流拠点(LC、ロジスティクスセンター)が存在します。工場から出荷された製品をLCで受け止め、受注後24時間以内に配送する体制を構築しています。
一般的なメーカーであれば、LC到着以降の配送は3PLなど外部企業へ委託するケースが多いのですが、当社の場合は、全国31のLCから、約1700社/17万店舗に向けて、1日当たり約1500台(小型車換算)を稼働させて自社グループ網で配送しています。工場からLCをつなぐ「メーカー物流」と、LCからセンターや販売店をつなぐ「卸物流/小売物流」という2つの機能を花王グループ内で一貫してまかなっているのが大きな特徴です。
MONOist 一方で、着任されてから分かった、物流領域の課題などはありましたか。
森氏 花王における物流領域は長らく、生産部門の一部として内包されていました。モノを作る工場とは物理的にも心理的にも近く、生産状況に応じた臨機応変な出荷調整ができる強みがありました。過去には、段ボールの積載効率に合わせて製品パッケージの厚みを改良し、梱包効率を1.5倍に向上させたといった取り組みもあります。
その一方で、販売部門とは遠い関係にあったため、部門最適による現場のゆがみが生じていました。特に近年は市場の急な需要増に応えるため、小売業との細かな調整が求められるようになり、バラ単位での納品や当日受注などオーダーの仕方も多様化しています。販売側が受けた要望を物流側が何でも引き受けていては現場がパンクし、ひいては生産側の需要予測にも悪影響を及ぼしかねません。
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