出光興産の“物流司令塔”実現した、人とAIの融合による配車時間23%減:ITmedia Virtual EXPO 2026 夏(1/2 ページ)

出光興産は、燃料油物流が抱える課題に対し、輸送の可視化とAI配車システム「aIDEM」の導入により業務の最適化を実現した。本稿では、「ITmedia Virtual EXPO 2026 夏」において、「出光興産が進める『燃料油物流DX』」と題して行われた講演の一部を紹介する。

» 2026年10月23日 06時00分 公開
[長町基,MONOist]

 アイティメディアが運営する産業向けメディアのMONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryは2026年8月25日〜9月25日に、製造業向けの国内最大級のオンラインイベント「ITmedia Virtual EXPO 2026 夏」を開催した。

 本稿では「出光興産が進める『燃料油物流DX』」と題して、出光興産 流通業務部 受注配送管理センター配送課 課長の友野寛氏が行った講演の一部を紹介する。

1日約5000件の配送オーダーを支える陸上物流の司令塔

 出光興産の燃料油物流は、1日当たり約5000件の配送オーダーをもとに約1800台のタンクローリーが稼働する。受注配送管理センターは、陸上物流において司令塔的な役割を担う。約70人の配車担当者が、受注情報をもとに配車計画を立て、油槽所や運送会社、乗務員、SS(サービスステーション)や需要家をつなぎながら、配送が予定通り進んでいるかを確認し、必要に応じて補正を行う。

出光興産における燃料油サプライチェーンの全体像 出光興産における燃料油サプライチェーンの全体像[クリックで拡大] 出所:出光興産
出光興産の友野寛氏 出光興産の友野寛氏

 燃料油の物流には、需要と納入先のタンク在庫を予測しながら自ら配送オーダーを作成する「計画配送」という特殊な形態が存在する。計画配送は、自らオーダーを制御することでオーダーの平準化や安定供給に寄与する有効な手段である一方、オーダー作成と実際の配車作業を一体的に処理しなければならない。そのため、全体の需要予測と個別の配車最適化は、総合的に行いつつも、性質の異なる別の問題として扱う必要があった。

 業務の難しさは規模だけではない。危険物物流としての安全規制があり、安全に関わる仕組みを幾重にも重ねているものの、少しの間違いが大きなリスクとなる。多くの制約条件を満たしながら供給責任を果たすため、日常オペレーションの安全を考慮する必要がある。友野氏は、「業務上、どうしても熟練者への依存が課題となっていた。しかし、属人化は個人の問題ではなく業務設定の問題であり、現場の努力の裏返しともいえる。DX(デジタルトランスフォーメーション)を進める上でも、この視座は外してはいけないと考えた」と語る。

第一歩は「見えない物流」の可視化から

 出光興産が物流DXに着手した背景には、3つの大きな課題があった。1つ目は、2024年問題や物流コスト上昇といった「外部環境の変化」により、従来手法での業務継続が難しくなっていることだ。2つ目は、需要減少の一方で担い手不足などが進行する「業界構造の変化」である。3つ目は「内部オペレーションの課題」で、膨大な組み合わせの最適化を要する配車業務の属人化や、ラストワンマイルの情報不足、システム分断によるデータ未整備といった問題を抱えていた。これまでも物理的な物流の合理化は進められてきたが、従来型のオペレーションには限界が顕在化していた。

 そこでDXの第一章として取り組んだのは、受注、配車、運行、荷卸し、実績などをつなぐ「輸送管理プラットフォーム」の構築である。出発点はシンプルで、積み込み後から荷卸し完了までの“見えない物流”を可視化することだった。配車計画を立てて出荷しても、その後のタンクローリーの位置や到着時間、荷卸しの状況、待機場所などが把握できていなければ、改善や高度化は不可能だ。友野氏は、「DXは、AIを導入すれば完成するわけではない。AIの前に、AIが学習できる現場でデータをつくることを出発点として、プラットフォームを作った」と振り返った。

 同プラットフォームの構築により、受注から荷卸しまでの情報をデジタルでつなぎ、タンクローリーの動態や作業実績などを蓄積できるようになった。紙やFAX、電話を中心としていた業務がデータとして扱えるようになったことは、目に見える大きな変化である。しかし友野氏は、「本当の価値は便利そうなシステムを作ったことではなく、現場の事実を記録し、後から改善できる状態になったことだ。デジタル化の真の価値は、現場に寄り添いながら業務を記録し、デジタルで支援できる状況を作り出すことにある」と指摘する。

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