AI活用は資源循環にも広がる。同社はPCやスマートフォンなどの電子機器に由来する廃基板類であるE-Scrap(有価金属を高濃度に含有する電子スクラップ)を回収し、金、銀、銅などを再資源化している。ただ、仕入れたE-Scrapの有価金属含有量である「品位」を確定するには、破砕やサンプリング、分析が必要となる。
「この品位の分析が終わるのに、長いときは1カ月半程度かかってしまうのが大きな課題だった」(端山氏)
品位が確定するまでは顧客から申告された含有量などを基に簿価を算出するため、最終的な分析値との差が課題となっていた。そこで導入したのがAIによる品位予測だ。
「過去10年分ぐらいのデータを活用し、当社が受領したE-Scrapが、例えばPC系か、スマホ系か、家電系なのか、いろいろな情報を加味してAIが大体の品位を推測している。実際の分析値との差もだいぶ縮まってきた」(端山氏)
AIは品位を予測するだけではない。分析結果に異常が見つかった場合は、過去の分析情報と照らし合わせ、「このパターンなら再検査した方がいい」といった判断にも活用している。
さらに同社が見据えるのが、E-Scrapをより多く活用した製錬だ。現状では鉱石が約7割で、E-Scrapは最大3割程度だという。
「今後は、E-Scrapの活用比率をさらに高めたを製錬を実現したいと考えている。そうなると、原料投入のプロセスが大事になってくる」(端山氏)
将来的には設備データに加え、溶解炉の色や音なども収集。AIで炉の状態を把握して「もう少し銅が多く含まれているE-Scrapを入れた方がいい」などの判断を行い、原料投入を制御する構想を描く。「AIを使ってホッパーの原料投入をコントロールする。そういうことを将来はやっていきたい。そのために今、分析の力を付けるステップを踏んでいる」(端山氏)
AIによる品位予測から再検査の判断、将来の製錬炉の制御へと、資源循環ビジネスそのものにAIを組み込もうとしている。
端山氏がAIやデータと並んで重視するのが人材育成だ。三菱マテリアルではDX/AI人材をレベル別に分類し、中級以上を「高度デジタル人材」として育成している。
従来の「手挙げ制」だけでは上級人材の育成が十分に進まなかったため、2026年度から会社側の指名も組み合わせる。2026年度には上級200人、中級1200人、2030年にはグループ全体で3000人規模を目指す。
ヤンマー建機と三菱マテリアルでは企業風土も事業領域も異なる。しかし、両社に共通するのは、AIだけを切り離して考えていないことだ。ヤンマー建機では、月次資料の作成や紙の削減といった身近な業務改善からデータ活用を広げ、その先にAIによる熟練者の知識継承を位置付ける。三菱マテリアルもデータ基盤や人材を整えながら、AIを資源循環という事業そのものの変革につなげようとしている。
ヤンマー建機の田中氏が講演で強調したのは「AIを使うことを目的にしない」ことだった。重要なのは、AIという技術そのものではなく、現場や事業をどう変えたいのか――その目的から逆算してデータを蓄積し、人とAIの役割を組み合わせることだ。
両社の取り組みは、製造業のAI活用が「どんなAIを導入するか」から「AIで業務や事業をどう変えるか」を問う段階へ移りつつあることを示している。
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