「ファクトリーイノベーションWeeK2026秋」において、特別講演「【DX推進・普及】現場発で組織を変える〜人とAIが実現する全社変革〜」が行われ、ヤンマー建機と三菱マテリアルが、それぞれのDXとAI活用について紹介した。本稿では、両社の講演を抜粋して紹介する。
「ファクトリーイノベーションWeeK2026秋」(2026年9月9〜11日、幕張メッセ)において、特別講演「【DX推進・普及】現場発で組織を変える〜人とAIが実現する全社変革〜」が行われ、ヤンマー建機 経営戦略部 イノベーション推進部 部長の田中重信氏と、三菱マテリアル CDIO デジタル戦略部長の端山敦久氏が、それぞれのDX(デジタルトランスフォーメーション)とAI(人工知能)活用について紹介した。
製造業で生成AIやAIエージェントへの期待が高まる中、それらを実際の業務変革にどう結び付けるかが問われている。ヤンマー建機は現場から始まった「草の根DX」を全社的な活動へ発展させ、熟練者の暗黙知をAIに取り込む取り組みに着手。一方、三菱マテリアルはデジタル戦略「MMDX(Mitsubishi Materials Digital Business Transformation)」を推進し、製造現場から資源循環、人材育成までAI活用を広げている。
本稿では、両者の講演を抜粋して紹介する。
「今日のキーワードは『草の根DX』と『AI』となる」
こう切り出した田中氏は、ヤンマー建機におけるDXの歩みを紹介した。田中氏はパナソニックを経て、2020年にヤンマー建機へ入社し、当初は品質保証部に所属。そこで目を付けたのが、身近にあるデータの活用だった。
「品質の月次報告会の資料を作るのに2週間くらいかけて、多くの人が、多くの時間を資料作りに時間を使っている状況を目の当たりにした。『これは、おかしい』ということで、BIツールを使ってダッシュボードを作ることから始めた」(田中氏)
すると生産部門や営業部門などから「BIツールを使わせてほしい」と声が上がり、活動が拡大。2022年にはDX専門部門が誕生した。田中氏は「部門ごとにやると部門内の予算で進めなくてはならない。でも会社として新しく部門ができると予算がつく。そこでいろいろなことが行えるようになった」と振り返る。
2023年には、社外の取り組みを参考に社内コミュニティーも立ち上げた。
「参加者同士がノウハウを教え合う活動をやってきた。これは非常に効果があった」(田中氏)
一方、「ボトムアップだけではやはり不十分。個人が好きなことをやっているという状況になる」とも指摘する。そこで現在は、部門方針や課題というトップダウンの視点と、ボトムアップの活動を組み合わせている。
DXを支えるデータ活用環境の整備も進めた。工場のシステムデータや市場のクレーム情報、営業情報などをDWH(データウェアハウス)に集約した。
「皆さんのデスクトップにある個人管理のさまざまな情報が一番危ない。全てDWHに入れる指示を出した」(田中氏)
BIツールはPCを持つ約500人の従業員のほぼ全員が利用でき、社内には約1800個のダッシュボードが作られたという。
紙の削減にも取り組んだ。全長約700mの筑後工場(福岡県筑後市)では、書類の押印や作業服の交換のたびに、工場の端にある総務部門まで行き来する必要があった。
「700m歩いて総務まで行き、手続きなどをしてまた戻ってくるのに30分かかっていた。これを改善するため、ワークフローツールを導入した」(田中氏)
さらに年間約数十万枚も使用していた紙の書類についても、タブレット端末を使った入力などを導入し、約2年間で半分程度まで削減した。こうして紙やExcelを中心としていた業務をデジタル化しながら、後のAI活用につながるデータを蓄積する環境を整えていった。
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