ヒューマノイド40台でフィジカルAIを育てる巨大拠点が稼働、その内部とは協働ロボット(2/3 ページ)

» 2026年09月02日 06時45分 公開
[安藤照乃MONOist]

 収集したデータは、INSOL-HIGHが開発したデータプラットフォームの「REAaL DATAプラットフォーム」上に蓄積する。ロボットの模倣学習で得たデータソースをデータセットとして整理し、機械学習によってタスクモデルを生成する。その後、シミュレーションでの反復的な評価や検証で精度を確認し、最終的に実機へ配備して現場で評価する仕組みだ。磯部氏によると、すでに数千規模の動作データを収集済みだという。

REAaL DATAプラットフォーム REAaL DATAプラットフォーム[クリックで拡大]出所:INSOL-HIGH

参画企業のメリットとは ツムラ、山善らが期待を寄せる

 関東データファクトリーの稼働に至るまでは、段階的な取り組みを進めてきた。2025年4月に山善とINSOL-HIGHが業務提携を締結し、同年10月には東京納品代行の協力で物流倉庫での実証実験を実施した。これらの成果を踏まえ、2026年3月にヒューマノイドロボットの製造や物流現場での実運用を目指す産業横断型の民間コンソーシアムとしてJ-HRTIを設立した。現在、同コンソーシアムには山善、ツムラ、ディーエムエス、芙蓉総合リース、非公開企業の計5社が参画しており、INSOL-HIGHが事務局を務めている。

ヒューマノイドロボットの社会実装に向けたこれまでの歩み ヒューマノイドロボットの社会実装に向けたこれまでの歩み[クリックで拡大]出所:INSOL-HIGH

 磯部氏は、「現場でヒューマノイドロボットが稼働するための、フィジカルAIを実用レベルに引き上げるためには、個社単独では数千から数万回単位のトレーニングが必要になる。データファクトリーという枠組みで各社の知見を共有し、設備投資を分担することで、『ゼロから作らなくていい』エコシステムを構築できることが最大のメリットだ」と協業の意義を語る。

 収集したデータは、競争領域と協調領域を切り分けて運用する。モノをつかむ、置くといった汎用的な基礎動作のデータは共有して蓄積し、全体のレベルアップを図る。一方で、各社独自のノウハウや機密性の高い作業データは競争領域として保護し、J-HRTI内に共有するかどうかは個社の判断に委ねるという運用ルールを設けている。

施設内アノテーションエリア 施設内アノテーションエリア[クリックで拡大]出所:INSOL-HIGH
INSOL-HIGHの磯部宗克氏 INSOL-HIGHの磯部宗克氏

 ツムラは漢方薬などの医薬品を展開する医薬品メーカーだ。同社 執行役員 生産本部長の熊谷昇一氏は、「人口減少による労働力不足が進む一方で、漢方の需要は増加している。当社はこれまでも製造工程の自動化を進めてきたが、従来の自動化技術は開発期間が長く、導入コストやライン停止期間の長さが課題となっていた。既存の生産ラインをそのまま活用しつつ、人の作業を柔軟に置き換えられるヒューマノイドロボットに期待を寄せている。伝統医療と最先端AIの掛け合わせによって、日本のモノづくりに貢献したい」と語った。

INSOL-HIGHの磯部宗克氏 INSOL-HIGHの磯部宗克氏

 また、ダイレクトメール発送や宅配便出荷などを手掛けるディーエムエス 代表取締役社長 山本克彦氏は、「現在の出荷ラインでは、厚みの違う紙に対するミリ単位の調整など、人の指先の感覚に委ねられている工程が多い。これからのロボットは『特定作業の専用機』から『自ら微調整を行う新しい戦力』へと変わる。長年培ってきた機械操作や荷物扱いのノウハウを学習データへ変換し、人とヒューマノイドが当たり前に隣り合って働く新しい物流現場のスタンダードを創出したい」と期待を寄せた。

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