「必要とされるモノづくり」を次の世代へ 未来は予測するものではなくつくるもの必要とされるモノづくりの追求(6)(2/3 ページ)

» 2026年08月20日 08時00分 公開
[伊丹琢MONOist]

未来を考える場から、ともにつくる場へ

 学生未来プロジェクトを進める中で、次第に1つの思いが強くなりました。

 未来について考え、発表するだけで終わらせず、そこで出会った人たちと、実際に小さな行動を始めることはできないだろうか――。そこで、相模原市やJR東海のFUN+TECH LABOとともに始めたのが、「未来イノベーションプロジェクト」です。

 このプロジェクトでは、分野や組織を限定せず、企業、自治体、学校、大学、学生など、若い世代や未来のために何かに取り組みたいと考える人たちに集まっていただきました。第1回には、企業、産業支援機関、小中高等学校、自治体、大学など、多様な立場の方々が参加しました。

 「イノベーション」という言葉を聞くと、画期的な技術や大規模な事業を生み出さなければならないように感じるかもしれません。しかし、必ずしも最初から大きな成果を目指す必要はないでしょう。まずは、それぞれが抱える課題や思いを共有する。情報を発信する。互いに協力する。社会貢献活動を一緒に始める――。そのような小さな共創から始めてもよいのです。

 異なる組織や専門分野の人たちが出会い、互いの課題や技術、思いを知る――。その出会いの中から、新しいモノづくりや教育、地域連携が始まる可能性があります。

関連リンク:

・NEWS詳細|FUN+TECH LABO


展示会は社会から評価を受ける研究教育の場

 私たちは、研究成果や学生たちの製作物を研究室の中にとどめず、展示会や地域イベントへ積極的に出展しています。

 例えば、「相模原SDGs EXPO」では、共同研究先の企業とともに、看護師や介護士の腰痛予防を目的としたスマートデバイスを展示しました。学生たちは、一般の来場者や自治体関係者に、自分たちの研究内容を直接伝えました。

 「さがみはらリニアフェスタ2025」では、学生たちが企画/設計/製作した「めいじろうロボット」(明治大学のマスコットキャラクターである「めいじろう」のぬいぐるみをロボット化したもの)を展示しました。子どもたちをはじめ、多くの方々に実際にロボットを体験していただきました。学生からは、「自分たちが協力して作ったロボットに、多くの方が興味を持ってくれてうれしかった」「研究や製作が人を笑顔にできることを実感した」という声も寄せられています。

 さらに、「2025国際ロボット展」では、歩行支援デバイス、腰痛予防デバイス、めいじろうロボットなどを展示しました。企画、展示構成、来場者への説明、プレゼンテーション、設営や撤収まで、学生たちが主体となって取り組みました。

 学会では、専門家に対して研究の新規性や有効性を説明します。一方、展示会や地域イベントには、企業、自治体、子ども、高齢者、一般の方々など、さまざまな人が訪れます。

 そこで聞かれる質問や得られる反応は、学会とは異なるものです。

  • これは何に使うのですか?
  • 誰が使うのですか?
  • 自分たちの現場では、このような使い方ができるのではないですか?
  • もっと簡単になりませんか?

 こうした声に直接触れることで、学生たちは、自分たちが作ったものが社会からどのように見えるのかを知ることができます。研究室の中では気付かなかった課題や、想定していなかった使い方が見つかることも少なくありません。

 展示会への出展は、完成した成果を見せるだけの場ではありません。社会の反応を受けて、再び研究やモノづくりを見直すための場でもあるのです。

2025国際ロボット展に出展した伊丹研究室の学生たち。展示会を通じて研究成果を社会へ発信するとともに、多様な来場者との交流を深めた 画像1 2025国際ロボット展に出展した伊丹研究室の学生たち。展示会を通じて研究成果を社会へ発信するとともに、多様な来場者との交流を深めた[クリックで拡大]

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