アラスジャパンは、東京都内で同社のコミュニティーイベント「ARAS CONNECT TOKYO」を開催した。本稿では同イベントに登壇した日産化学 袖ケ浦工場 技術開発室 室長の沼尻悟氏と同工場 デジタル改革室 室長の進士智成氏による基調講演の内容を紹介する。
アラスジャパンは2026年6月16日、東京都内で同社のコミュニティーイベント「ARAS CONNECT TOKYO」を開催した。本稿では同イベントに登壇した日産化学 袖ケ浦工場 技術開発室 室長の沼尻悟氏と同工場 デジタル改革室 室長の進士智成氏による基調講演の内容を紹介する。
日産化学は「社会が求める価値を提供し、地球環境の保護、人類の生存と発展に貢献する」を企業理念に掲げ、化学品事業や機能性材料事業、農業化学品事業、ヘルスケア事業を展開している。
近年、開発競争が激化しており、新製品の早期市場投入を実現するために開発効率の向上が求められている。沼尻氏は「ベテラン従業員に依存してしまう『技術の属人化』や『部門間の壁』といった問題により、生産性や技術力の低下が起きている。また、環境規制やトレーサビリティーなどの対応など製品ライフサイクル全体でのコンプライアンスが求められている」と強調する。
技術継承を行うために人手が必要だが、そのための人材確保が満足にできないといった課題にも直面している。日産化学の袖ケ浦工場(千葉県袖ケ浦市)ではさまざまな製品を開発してきたが、事業が成熟し、次の成長エンジンになり得る新事業や新規製品の創出ができていないという状態だという。
このような中、袖ケ浦工場は新たな一歩を踏み出すために、「シンカする開発工場」を目指してこれまで抱えていた課題を見直し、工場変革を実施するためPLM(製品ライフサイクル管理)導入に踏み出した。
工場の現場では設計思想や技術のノウハウが個人に依存しており、組織の技術として蓄積していない。そのため、設計変更などの共有すべき最新情報が不明確になってしまう。また、データを構造化して蓄積する仕組みが無いことにより、部門間の情報の断絶が発生し、これらの課題が製品開発のスピード低下につながっている。
このような課題を解決するために、袖ケ浦工場ではモノづくりプラットフォームを構築し、エンジニアリングチェーンで生じるデータを1カ所に集約させ、「組織間を横断して連携可能にするデータ活用環境の構築」を目指したいと考え、PLM導入を進めた。
沼尻氏は「PLMを導入することでリアルタイムな情報共有が可能になり、設計と試作を並行して実施するコンカレントエンジニアリングが可能な状態を目指す。研究開発や量産に向けた準備といった開発期間を短縮して、競争優位性を確保したい」と述べる。
PLM導入後は技術情報の資産化、コンカレントエンジニアリングの実現、新製品の早期開発、経営指標の向上といった効果が生まれると考えており、KGI(経営目標達成指標)やKPI(主要業績評価指標)などの指標を用いて、PLM導入効果を確認する。
袖ケ浦工場ではPoC(概念実証)を実施して導入効果を検証した上で、要件定義、設計構築、テストを進め、2026年1月からArasのPLMシステム「Aras Innovator」の運用を開始している。PLMにAras Innovatorを選定した理由について沼尻氏は「Aras Innovatorは柔軟性と拡張性に優れており、われわれが保持したい機能要求の大部分を実現可能であった。事業拠点固有の業務運用もできると判断し、開発コストや全工場展開、ランニングコストを含めたトータルコスト観点で最適なツールとしてAras Innovatorを選定した」と強調する。
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