日本における従来の産業用ロボットは高精度で高速性と安定性を兼ね備えた反復作業を得意としており、さまざまな現場で数十年稼働しているという実績がある。この領域にフィジカルAIを活用することで、よりロボティクスの適用範囲を拡大できる可能性がある。
これまでは、人間がロボットを動かして動作を学習させる(ティーチング)など事前に全ての動作をプログラムする必要があった。しかし、この作業はケーブルや布地といった形状が変化する製品や予期せぬ状況に対応できないという技術的な壁を抱えていた。
一方、フィジカルAIは言語や画像といったデータから、機械学習ベースで状況を自ら判断し、複雑なタスクや不確実性の高い環境に適応可能である。そのため、靴ひもを結ぶといった全体を言語化しづらい作業について、柔軟に状況を把握しながら目的を達成することができる。
フィジカルAIのブームが起きた要因について、岡本氏は「AIとロボティクス技術が同時に発展し、ブレークスルーを迎えたことが大きい」と分析する。AI側では「VLA(Vision Language Action)モデル」が登場し、自然言語指示と視覚情報からロボットの行動を直接生成できるようになった。また、物理法則を理解して世界の次の状態を予測する「世界モデル」の発達が見られている。
一方、ロボティクス側では小型/軽量/ハイパワーなハードウェアが技術の進化によって続々と生まれており、ヒューマノイドの実用化も進んでいる。従来はクローズドになっていたロボット制御がソフトウェアで拡張可能になったことも大きい。
AWSはドイツで開催した産業見本市「ハノーバーメッセ 2026」(会期:2026年4月20〜24日)に出展し、フィジカルAIの展示として“AI-Driven Product Journey”デモを披露している。同デモは、ヒューマノイドやアームロボット、検査装置などをAIエージェントがクラウド上で統括/管理し、自律的に作業を連携させるという内容である。
AWSジャパン 自動車・製造事業開発本部 インダストリースペシャリストソリューションアーキテクト(製造業担当)の山本直志氏は「デモを見た顧客から、従来では多大なコストがかかっていたMES(製造実行システム)の役割を代替し、多品種少量生産に柔軟に対応できる可能性があるという意見をもらった」と語る。
デモで使用した中国Unitree Roboticsのヒューマノイド「Unitree G1」には、AWS上で学習させているVLAを使用しており、模倣学習によるトレーニングを受けている。これにより、ピックアップ場所と配送先のマーカーを発見して製品を受け取った後に、自律的に歩行しながら受け取り台に製品を届けることを可能にした。
AWSのフィジカルAIを構築する流れとして、初めにデータを収集し、収集完了後にクラウドGPUによる高速学習を実行する。学習を済ませた後はシミュレーションに移行し、その後にIoT(モノのインターネット)技術を活用して実機へのデプロイを実施する。これらの工程を経て最後にAIエージェントと連携させるという。山本氏は「NVIDIAのIsaac Simを大規模なスケールで実行できるのがAWSのクラウドである」と述べている。
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