連合学習AIから離脱企業のデータだけ完全削除する新技術、フラウンホーファーと富士通ハノーバーメッセ 2026

ドイツのフラウンホーファーISSTとFujitsu Researchは、複数企業による連合学習(Federated Learning)で構築したAIモデルから、特定企業のデータだけを後から完全削除できる「Federated Unlearning(連合アンラーニング)」技術を開発した。フラウンホーファーISSTが、ドイツで開催された「ハノーバーメッセ2026」(4月20日〜24日)で公開した。

» 2026年04月30日 06時00分 公開
[永山準MONOist]

 ドイツのフラウンホーファーISSTとFujitsu Researchは、複数企業による連合学習(Federated Learning)で構築したAIモデルから、特定企業のデータだけを後から完全削除できる「Federated Unlearning(連合アンラーニング)」技術を開発した。フラウンホーファーISSTが、ドイツで開催された「ハノーバーメッセ2026」(4月20日〜24日)で公開した。

データ主権を維持しつつAIを共同開発、「連合学習」の課題に対応

 複数企業がデータを持ち寄ってAIモデルを共同開発する取り組みは、より多様で大量のデータを利用できるため、モデル精度の向上という観点から有効性が認識されている。

 製造業においても例えば、複数企業が同じフライス盤モデルを異なる方法で使用している場合、それぞれ異なる運用データがAI学習に反映できる。また、ある企業はモーター故障時のデータを、別の企業はフライスヘッド破損時のデータを提供するといった形で多様なデータを学習でき、その結果AIは実運用において、モーターの過熱時期やフライスヘッドの限界到達時期を事前にシミュレーションできる。これは参加企業全体に利益をもたらすことになる。

模型を用いてFederated Unlearning(連合アンラーニング)の概念を説明する様子 模型を用いてFederated Unlearning(連合アンラーニング)の概念を説明する様子

 企業がデータ主権を維持するために採用するのが、連合(フェデレーテッド)分散学習アプローチだ。この方式では、データは中央サーバに送られず、各企業のローカル環境内でAIモデルのコピーに学習させる。共有されるのはデータそのものではなく、抽象化されたパラメータであり、各企業は他社にデータを公開せずにAI開発へ参加できる。

 その一方で、共同開発において参加企業が途中で離脱する場合、その企業のデータやパラメータは依然としてAIモデル内部に深く組み込まれたままになる、という課題がある。フラウンホーファーISSTは「これらのデータを、予測やシミュレーション性能を損なうことなく『ブラックボックス化したAI』から取り除くことは、これまでほぼ不可能だった」と説明。フラウンホーファーISSTと富士通研究所が開発する新技術はこうした課題に対応するものだとしている。

「不可能を可能に」 元の性能レベルまで半分の時間で回復

 フラウンホーファーISSTらが開発する連合アンラーニングは、分散型AIモデルにおいて特定のデータ提供者の影響を遡及的に削除し、モデルを再構築する技術だ。この手法はAIの学習履歴をたどり、対象となるデータが導入される前の状態までモデルを巻き戻した上で再学習を行う。これによって、該当データの影響を完全に排除することが可能になるのだという。

 連合学習では上述のように、各参加企業が自社環境でモデルを学習し、その更新パラメータのみを共有する。データそのものを中央に集約しないため、データ主権を維持できる点が利点とされる。一方、学習済みモデルには各社のデータが複雑に反映されるため、個別データの影響を分離することは困難だった。そのため従来は、特定の参加者のデータを除去するにはモデル全体を再学習する必要があったという。

 今回の手法では、学習プロセスの中間状態や更新履歴を保持しておくことで、再学習の効率を高めている。初回学習時と比較して短時間で性能を回復できる点が特徴で、実運用における再構築コストの低減が期待される。フラウンホーファーISSTの説明担当者は「この手法によって元の性能レベルに回復するまでの時間を約半分に短縮可能だ」と語っていた。

連合アンラーニングのイメージ 連合アンラーニングのイメージ[クリックで拡大]

 また、この技術は、企業のAI活用を加速する効果も期待されるという。単に影響を低減するのではなく「完全に削除する」ことを前提として設計されていることから、「高品質かつ効率的にソリューションや製品を開発するためのAIの巨大な可能性を活用しつつ、必要になれば自社データを残さずプロジェクトから撤退できる。これは、GDPR(EU一般データ保護規則)のようなデータ規制への対応が求められる企業にも大きな利点だ(フラウンホーファーISST)としている。

 活用例としては、離脱企業のデータ削除の他、センサー不具合などによる誤データがモデルに与える影響への対応などもある。今回会場で公開していたデモでは、歩行者検知のようなユースケースを例に、誤ったデータが混入した場合でもアンラーニングによって当該データのみを除去し、モデルを健全な状態に簡単に戻せることを紹介していた。

会場で体験できた連合アンラーニングのデモ会場で体験できた連合アンラーニングのデモ 会場で体験できた連合アンラーニングのデモ[クリックで拡大]

 同技術はフラウンホーファーISSTとFujitsu Researchの共同研究として進められているものだ。説明担当者は「次のステップとして、この技術を実際に試せるパートナーを見つけて、さらに発展させていきたいと考えている。自動車分野、予知保全、ヘルスケアなど応用分野は広い。複数のパートナーが協力してより良いモデルを作りたいあらゆる分野で活用できる。技術自体は既に確立されているが、実際のソフトウェアとして実装していく必要がある」と語っていた。

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