G-SHOCKの進化を支えた材料活用の歴史、初代でウレタンを採用したワケ素材で進化する製品(2)(2/3 ページ)

» 2026年05月21日 07時00分 公開
[遠藤和宏MONOist]

異素材を絶妙に融合させたG-SHOCK

 1999年には、メインの構造体にメタルを採用し、落下面にウレタン樹脂を活用したメタルツイステッドデザインの「MT-G」の初代モデル「GC-2000」を発売した。齊藤氏は「これまでのG-SHOCKは、落下時にボタンなどの精密なパーツに衝撃が直接加わらないよう、ベゼルが出っ張ってバンパーのようにガードする設計を採用していた。一方、MT-Gでは、衝撃を受けやすい落下面(バンパー部)にのみウレタン樹脂を配置し、メインの構造体にメタルを使用するというハイブリッドデザインを採用した」と語った。

「GC-2000-1A」 「GC-2000-1A」[クリックで拡大] 出所:カシオ

 その上で、「これにより、フルメタルよりも軽量でスポーティでありながら、メタルの高級感を備えたG-SHOCKが誕生した。メタルの光沢と黒色の樹脂が融合したハイブリッドデザインは、『オンでもオフでも使えるG-SHOCK』として広く支持を集め、MT-Gは現在に続く人気シリーズとなった」と補足した。

2010年代に炭素繊維の活用をスタート

 2011年には、ウレタン樹脂に炭素繊維を組み込んだ「カーボンファイバーインサートバンド」をG-SHOCKとして初めて採用した「GW-S5600-1JF」を発売した。

「GW-S5600-1JF」 「GW-S5600-1JF」[クリックで拡大] 出所:カシオ

 「カーボンファイバーインサートバンドの開発では、ウレタン樹脂に炭素繊維をそのまま組み込んで強度を高めることにチャレンジした。ここで問題が生じた。ウレタン樹脂は引っ張ると伸びるが、炭素繊維は伸びない。そのまま内包すると、バンドを曲げた際に繊維が剥離する。そこで開発チームは、炭素繊維のシートを斜め(バイアス方向)にカットして挿入するという手法を編み出した。繊維の方向を斜めにすることで、バンドが引っ張られた際に繊維網が変形して追従し、ウレタン樹脂との一体化に成功した」(齊藤氏)

 2015年には、チタンに約6%のアルミと約4%のバナジウムを添加することで純チタンより高い硬度を持つ合金「64チタン」を採用した64チタンベゼルをG-SHOCKとして初めて備えた「GPW-1000T」を発売した。「通常の純チタンは軽量だが、ステンレスに比べて傷がつきやすいという弱点があった。そこで2015年、時計の顔であり最もぶつけやすいベゼル部分に、純チタンより高い硬度を持つ64チタンを採用した。64チタンは加工(切削や研磨)が難しい素材だが、あえて採用することで、美しい鏡面仕上げと傷への強さを両立した」と齊藤氏はいう。

「GPW-1000T-1A_JF_DF_CF_EF」 「GPW-1000T-1A_JF_DF_CF_EF」[クリックで拡大] 出所:カシオ

 2017年には、G-SHOCKとして初めてカーボンベゼルを採用したG-STEELシリーズの「GST-B100XA-1AJF」と「GST-B100X-1AJF」を発売した。カーボンベゼルは、東レの微細構造技術「NANOALLOY」を活用したカーボンファイバーシートに樹脂を含侵させたものを複数枚重ね合わせて、熱と圧力で焼き固めた強固なカーボンファイバー強化樹脂の板を削り出したものだ。齊藤氏は「金属の重さと樹脂の弱さを克服した、超軽量/超高剛性なベゼルを開発できた」と紹介した。

「GST-B100XA-1AJF」 「GST-B100XA-1AJF」[クリックで拡大] 出所:カシオ

 2019年にはG-SHOCKとして初めてカーボンファイバー強化樹脂をメインケースを採用した「GA-2000」を販売開始した。メインケース自体がより強固になったという。

「GA-2000-1A9_JF」 「GA-2000-1A9_JF」[クリックで拡大] 出所:カシオ

 齊藤氏は「これにより、衝撃に耐え得る細いカーボン製のパイプ状パーツでボタン周りを設計できるようになった結果、『GA-2100』シリーズに代表されるような、G-SHOCKの概念を覆すような薄型化/スマート化を実現した腕時計を開発可能となった」と回想する。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
Special SitePR
あなたにおすすめの記事PR