日本オラクルは、同社が展開する「基幹系AI」の最新動向を説明した。AIのコモディティ化が進む中、SaaS事業者は技術の固定化を避け、柔軟なアーキテクチャ構成が求められる。ウイングアーク1st、NSW、ソフトマックスの3社も登壇し、「SaaSの死」を回避するAIを核とした生存戦略を紹介した。
日本オラクル(以下、オラクル)は2026年5月14日、東京都港区のオラクル青山センターにおいて「Oracle AI」の最新動向に関する説明会を開催した。当日はオラクルによる技術解説に加え、実際に自社SaaSへAI(人工知能)実装を進めるウイングアーク1st、NSW、ソフトマックスの3社が登壇し、開発の背景や導入成果、次世代システムに向けた展望を語った。
日本オラクル 執行役員 クラウド事業統括 クラウド・パートナー・エンジニアリング統括の吉川顕太郎氏によると、AIの進化には3つの段階があるという。第1段階の「生成のための推論(Inference)」と第2段階の「判断支援のための推論(Reasoning)」を経て、今後はAIが自律的に業務を遂行する第3段階の「基幹系AIによるプロセスの実行(Action)」へと進む。しかし吉川氏は、「この第3段階への移行には大きなギャップが存在する」と指摘した。
業務プロセスを直接実行する基幹系AIには、従来の推論AIとは異なる運用要件が求められる。具体的には、リアルタイムな業務データの活用や、アクセス権限に応じた厳格なデータ制御、予測が難しいシステム負荷への対応などだ。
中でも課題となるのが、基幹システム特有の、技術の「塩漬け(固定化)」問題だ。吉川氏は、「従来の基幹システムでは、安定稼働を目的に技術を固定することが一般的であった。しかし、技術進化の速いAI領域で特定の技術に依存し続ける、つまり技術を塩漬けしてしまうことは、企業の競争優位性を低下させる要因になる」と警鐘を鳴らす。つまり、目まぐるしいテクノロジー変化の中で、常に最新の技術へ切り替えられる、柔軟なアーキテクチャの構築が不可欠になるのだ。
こうしたアーキテクチャの要請は、サービスを提供するSaaS事業者の新たな課題となっている。日本オラクル クラウド事業統括 クラウド・パートナー・エンジニアリング統括 ISVソリューション本部 部長の屋敷一雅氏は、「AIモデル自体が急速にコモディティ化する現状において、単にモデルの性能を競うだけではSaaSとしての競争優位性を維持することは難しい」と指摘した。
SaaS事業者は、企業内に散在するデータの統合や顧客ごとのデータ分離といった従来のシステム要件に加え、進化の速いAIに対応するための最適なLLM(大規模言語モデル)の選定、モデルの入れ替えを見据えた設計、コストの最適化など、考慮すべき事項が複雑化している。これからのSaaS事業者が市場で差別化を図るには、統合的かつ多角的な視点でのアプローチが不可欠になるという。
これらの課題を解決する基盤としてオラクルが提供するのが「Oracle AI」である。Oracle AIとは、AIモデルの構築や実行を担うクラウド基盤「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」をはじめ、AI処理とデータ管理を統合した「Oracle AI Database 26ai」、あらかじめAI機能が実装されている業務アプリケーション「Oracle Fusion Cloud Applications」などから構成されるテクノロジースタックだ。事業者は、自社の技術要件に合わせてこれらを組み合わせ、SaaS製品へAI機能を組み込み、独自のユースケースを開発できる。これらテクノロジーの提供に加えて、AI活用の方向性の提案や、RAG(検索拡張生成)の有効性を実際のOCI環境上で検証するなど、実装に向けた支援体制を整えている。
こうした基盤の提供を通じてオラクルが目指すのは、パートナー企業との協業による新たな価値の創出だ。吉川氏は「Oracle AIで全ての開発を終わらせるのではなく、その上にSaaS事業者のソリューションを乗せることで、強力なエコシステムを完成させるイメージだ」と展望を語った。
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