現地化の壁 日本のリーダーに知ってほしい「挑戦する組織」の設計図:海外駐在員になったら知ってほしい「3つの壁」(3)(1/2 ページ)
多くの製造業が海外での成長を目指す中、海外駐在員の役割は重要になっています。しかし、日本と海外のギャップで力を発揮できない場合も多く見られます。本連載では、HR視点でどのような考え方が必要で、どのような協力体制を築くべきかをお伝えします。第3回となる今回は「現地化」に向けて、「挑戦する組織」をどう構築するかについて解説します。
本連載では、HR(Human Resources)の視点で、海外駐在員がぶつかる「リーダーシップの壁」「現地化の壁」「連携の壁」という3つの壁について、対策を解説しています。
前回までは、日本でのリーダー像と海外でのリーダー像の違いから生まれるギャップと、それをどう乗り越えるべきかについて、説明してきました。「Our Style(チームの軸)」を設計する重要性も紹介しましたね。
今回は、2つ目の壁として「現地化の壁」について紹介します。現地の人材および組織が指示待ちで終わるのではなく、「挑戦する組織」として機能するためには何が必要でしょうか。
海外に赴任した方には、現地の顧客や競合の動きを肌で感じ「このままでは生き残れない」と危機感を持たれている人も少なくないでしょう。そのため、現地組織に対し「挑戦が必要だ」と強く訴えているかもしれません。しかし、どれだけ熱く「挑戦」を説いても、現地のスタッフに新たな動きが生まれることは少ないでしょう。
多くの企業で実施してきた調査から、挑戦行動を阻害する主な要因は以下の3つに集約されます。
- 【心理のハードル】減点主義に伴う心理的負債
組織内に「失敗=悪」という認識が染み付いている状態です。ミスをしないことが評価に直結するため、現場にとって「現状維持」が最も合理的な生存戦略となります。挑戦に伴うリスクを組織全体で許容できない「心理的安全性の欠如」が根底にあります
- 【体質のハードル】トップダウンによる弊害
意思決定が上層部に集中しすぎている状態です。経営の意思決定に現地マネジャーが関われておらず、現場は「本質的な意図が分からないため、指示を待つこと」が最も効率的で安全な戦略だと学習し、自律的な思考が停止してしまいます
- 【戦略のハードル】過去の成功体験や既存モデルへの固執
かつて会社を成長させた「勝利の方程式」が、現在は「成長の枷(かせ)」になっている状態です。既存事業の収益確保が最優先され、市場環境や顧客ニーズの変化から目をそらしています。また、旧来の働き方やKPI(重要業績評価指標)を変えないこともこれに該当します
挑戦を阻む3つのハードル[クリックで拡大] 出所:リンクアンドモチベーション
これらを乗り越えるためには、壁となる一つ一つの課題にアプローチする手法ではうまくいきません。いずれかの壁が生じている場合には、以下の4つのステップに沿って、変革に向けた「組織の動き」を作り出すことが大切です。
- 挑戦の「方向性」を明確にする
挑戦には、M&Aや事業再編、設備投資など、経営者にしかできない「枠組みの挑戦」と、現場で大小さまざまなイノベーションが多発するような「中身の挑戦」の2種類があります。まずはどちらの挑戦を実現したいのか、経営層が自ら考え、ベクトルを示す必要があります。また、「中身の挑戦」を目指す場合も、その具体例や参照点を示すことが必要です
- 方向性への「共感」を創り出す
絵に描いた合理性だけで人は動きません。従業員にとっての目標の魅力、実現可能性、会社としての使命感を具体化して伝える必要があります。そのためには、まず現地マネジャーを含めた「現地の経営ボードが一枚岩」になり、目指す方向に対する共感を創り出すことが必要です
- 「仕組み」を整える
加点評価にしたり、細かい工夫にインセンティブを設計したりします。また、新しい挑戦の多くは組織間に存在する(部門横断型になる)ため、組織の壁を越えて協働する仕組みを作ったり、組織ごとの個別目標の衝突に対して、交通整理を行う必要があります
- 「共創的コミュニケーション」の土壌を作る
「教える/指示する」ことはマネジメントをする上で大切なコミュニケーションですが、それだけになってしまうと社員の受け身姿勢を強化してしまいます。また、事業環境の変化が激しい状況では、マネジャーの経験や知識、アイデアに頼りすぎると勝ち筋を見いだせないことも増えています。職場の英知を結集すべく、共創的な対話コミュニケーションを実践することが大切です
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