「日本にもうひとつ太陽をつくる」計画の第1弾公式パートナーが決定材料技術(1/2 ページ)

「日本にもうひとつ太陽をつくろう」をスローガンに掲げるHelical Fusionが、2030年代にヘリカル型の核融合発電炉による実用発電の達成を目指す「Helix(ヘリックス)計画」の「公式パートナー」制度を発足した。公式パートナーの第1弾として、ニチアスや長谷虎紡績、瀬野汽船といった3社の参画が決定したことも明かされた。

» 2026年04月30日 06時15分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 核融合(フュージョンエネルギー)発電炉による「実用発電」の達成と産業の創造に向け、ヘリカル方式の核融合発電所の開発を進めるHelical Fusionは2026年4月28日、東京都内とオンラインで記者会見を開催し、2030年代にヘリカル型の核融合発電炉による実用発電の達成を目指す「Helix(ヘリックス)計画」の「公式パートナー」制度を発足したと発表した。

 公式パートナー制度とは、ヘリックス計画を、Helical Fusionとともに主体的に推進する提携企業を公式パートナーと定める制度だ。公式パートナーは、技術/事業上の業務提携や一定額以上の資本提携を伴い、フュージョンエネルギー産業の実現へ、創造性と粘り強さをもって挑戦する覚悟をともにするという。

 具体的には、今後開発を進める最終実証装置「Helix HARUKA」や発電初号機「Helix KANATA」の製造/建設やそれに関わる取り組みをともに進める。

 公式パートナーの第1弾として、ニチアス、長谷虎紡績、瀬野汽船の3社の参画が決定したことも明かされた。

岐阜県土岐市で最終実証装置を建設中

 Helical Fusionは、「日本にもうひとつ太陽をつくろう」をスローガンに掲げ、ヘリカル方式の核融合発電所の開発を進めている。

「日本にもうひとつ太陽をつくろう」をスローガンに。書道家の武田双雲氏による「太陽」の書を、ヘリックス計画の公式シンボルとした 「日本にもうひとつ太陽をつくろう」をスローガンに。書道家の武田双雲氏による「太陽」の書を、ヘリックス計画の公式シンボルとした[クリックで拡大] 出所:Helical Fusion
Helical Fusion 代表取締役 CEOの田口昂哉氏 Helical Fusion 代表取締役 CEOの田口昂哉氏 出所:Helical Fusion

 Helical Fusion 代表取締役 CEOの田口昂哉氏は「核融合は太陽の中で起こっている反応だ。太陽だけではなく、恒星は全てこのフュージョンエネルギーによって輝きとエネルギーを放っている。すなわちこのフュージョンエネルギーは、星のエネルギーと考えることができる。しかも、実は人類にとって身近なエネルギーだ。人類は今まで、薪、石油、石炭、天然ガス、ウランといったエネルギーを使ってきたが、これらは全て元をたどると核融合のエネルギーだ。例えば、薪は太陽のエネルギーを吸収して育った木をカットしたものとなる」と話す。

 核融合発電は、超高温かつ高密度の環境に水素同位体を閉じ込めることで生じる核融合反応で発生する大きなエネルギーを発電に活用する次世代型の発電方式となる。

 この発電方式は、三重水素や重水素を超高温かつ超高圧で加熱しプラズマ状態として双方の原子核を衝突させ合体させることで核融合反応を起こし中性子を発生させ、その中性子からブランケットを通して熱エネルギーを抽出し発電に利用する。なお、重水素と三重水素の核融合は同じ質量の石油の燃焼と比べて約1500万倍のエネルギーを創出するとされている。

ヘリカル方式と他の方式の比較 ヘリカル方式と他の方式の比較[クリックで拡大] 出所:Helical Fusion

 ヘリカル型核融合炉は、ヘリカルコイル、プラズマ、ポロイダルコイルなどから成り、トカマク型と比べてプラズマ性能は劣るものの、プラズマ保持時間が長く恒久的な稼働に適している。さらに、1億℃の水素ガス(プラズマ)を閉じ込めるために複数のらせん状のヘリカルコイルを使うタイプを指す。ヘリカルコイル自身をらせんにすることで、電流が作る磁場を重畳させて磁場を捻(ひね)る。このように、磁場の籠でプラズマを閉じ込める方法を「磁場閉じ込め方式」と呼ぶ。

 ヘリカル型核融合炉による実用発電を実現するためには、「正味発電(入力エネルギーより出力エネルギーが多いこと)」「定常運転(安定して連続稼働できること)」「保守/メンテナンス可能な設計」という3つの要件を満たす必要がある。

商用発電所の3要件 商用発電所の3要件[クリックで拡大] 出所:Helical Fusion

 田口氏は「これらの要件を現存する技術で同時に満たすことができるのは、日本で発明され、日本でのみ大型化に成功している『ヘリカル方式』に限られる」と力説した。

 ヘリックス計画に関して現在、岐阜県土岐市の核融合科学研究所内でヘリカル型核融合炉の最終実証装置であるHelix HARUKAの建設を進めている。Helix HARUKAは、実用発電に向けた要素技術(人工太陽の生成、磁場による閉じ込め、エネルギーを受け止める壁など)を統合して実証するための装置だ。

Helix HARUKA建設の様子 Helix HARUKA建設の様子[クリックで拡大] 出所:Helical Fusion

 同装置を用いた実証は2つのフェーズで行う。フェーズ1では、3次元らせん構造の高温超伝導(HTS)コイルを組み立て、マグネットとしての性能などを実証する通電試験を行う。マグネットは、磁場閉じ込め式核融合炉において、自動車におけるエンジンのように装置全体の性能、信頼性、コストを決定づける基幹部品だ。

 次の段階となる統合実証フェーズ(以下、フェーズ2)では、高温超伝導(HTS)マグネット、ブランケット兼ダイバータを含む主要要素技術の統合実証による、発電初号機であるHelix KANATAへの技術的見通しの確保を行う。将来の発電所に必要な定常運転の確立に向けた、高温プラズマの長時間維持などをチェックする。

Helix HARUKAの概要 Helix HARUKAの概要[クリックで拡大] 出所:Helical Fusion

 「このフェーズ2は、DT燃焼(重水素と三重水素を用いた燃焼)を予定しておらず、軽水素でのプラズマ生成/維持の実験となる。予算については、全体で350〜400億円程度を見込んでいる。全てを民間資金で賄うのではなく、経済産業省が発表した600億円規模の核融合技術開発支援プログラムなどの補助金も活用し、官民一体となって実験完了を目指す」(田口氏)

 核融合炉の建設には、素材、部品、加工、組み立て、建設といった、日本のモノづくり産業が得意とする領域が数多く含まれている。

 田口氏は「過去30年間の日本の産業を振り返ると、いかに優れた部品や素材を作っても、完成品をまとめるインテグレーターが海外企業であったため、国外の企業との価格競争に巻き込まれ、産業全体が弱体化していた」と警鐘を鳴らす。

 その上で、「新しく立ち上がる巨大なフュージョンエネルギー産業で、同じ歴史を繰り返してはいけない。日本発のヘリカル型核融合実験炉を用いた核融合発電でインテグレーターのポジションを確立することで、価格ではなく『品質』で勝負する土俵を作り、日本のモノづくり産業の本来の力を再活性化させることが当社の狙いだ」と強調した。

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