年間8000万円のコストを削減した知財業務自動化AIを外販、特許申請を高速化知財ニュース(1/2 ページ)

ベテラン知財部員の「暗黙知」を言語化し、誰もが使えるシステムへ――島津製作所が新会社「Genzo AI」を設立し、次世代知財業務AIプラットフォームの提供を開始した。同年3月25日には京都市内で開催された会見を通して、リリースに至った新たなAIプラットフォームの開発経緯や特徴、可能性について紹介する。

» 2026年04月02日 06時00分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 島津製作所は、同社の知的財産部が独自で開発/運用してきた知財関連業務の自動化プラットフォームを提供する企業としてGenzo AIを、IP Agentと共同で2026年4月1日に設立し、知財業務自動化プラットフォーム「Genzo AI」の提供を同日に開始した。

 同年3月25日には京都市内とオンラインで記者会見を開催し、知財業務自動化プラットフォームのGenzo AIの開発背景や特長、今後の展開などについて紹介した。

年間8000万円かかっていた外部委託コストを削減

 島津製作所 常務執行役員 CTOの西本尚弘氏は「島津製作所において知財関連業務でAI(人工知能)活用をスタートしたのは2023年だ。当時、知的財産部では、生成AIを活用し侵害予防調査の自動化プロジェクトを行った」とあいさつした。

 続けて、「一方、さまざまな企業において知財業務では、『慢性的な人手不足』『外部に委託するコストの高騰』『ベテランの頭の中にある暗黙知の継承が困難』という課題に直面している」と指摘した。

なぜ今、知財特化型のAIが必要なのか なぜ今、知財特化型のAIが必要なのか[クリックで拡大] 出所:島津製作所

 同社はこういった問題を解決するために生成AIを用いたシステムの開発に着手したという。「(知財に関する訴訟において)高い勝訴率を誇る社内の専門家チームの思考プロセスを徹底的に分析し、この結果を生成AIのプロンプトに落とし込み、誰もが使える知財業務の自動化システムを自社で開発した。結果として、『年間8000万円かかっていた外部委託コストの削減』『発明届出業務の工数50%削減』『新入社員の即戦力化』といった成果を上げられた」(西本氏)。

島津製作所は知的財産部の課題を自らの手で解決するプロジェクトを始動 島津製作所は知的財産部の課題を自らの手で解決するプロジェクトを始動[クリックで拡大] 出所:島津製作所
生成AIを用いたシステムの島津製作所への導入効果 生成AIを用いたシステムの島津製作所への導入効果[クリックで拡大] 出所:島津製作所

 生成AIを活用したこのシステムを知財業務自動化プラットフォームのGenzo AIとしてリリースした背景にはさまざまな要因があったという。「2025年5月に開催された社外イベントで、当社 知的財産部 部長の阿久津好二が生成AI活用の取り組みを発表した。2025年6月には発表内容がメディアで取り上げられ、その記事が年間ランキング1位になるほどの大きな話題になった。これ以降、阿久津には講演依頼が殺到しこれまでに30回を超える講演や、50社以上の知財担当者と直接の意見交換をした」と西本氏は振り返った。

 その上で、「しかし同時に知財業界が抱える課題が浮き彫りになった。世の中には汎用的な生成AIとか特化型AIが存在しているにもかかわらず、多くの企業が組織としてこれらのAIを実務に組み込んで活用できているという事例がごくわずかだ。多くの企業あるいは現場がAI導入の壁に苦戦しており、島津製作所で使っているこのシステムを自社に導入できないかという強いご要望が後を絶たない。多くの企業がこのシステムを求めており、もう社内だけのものにとどめておくべきではないと強く感じるようになった」と話す。

 そんな中、このシステムをGenzo AIとしてリリースする決め手になったのは2025年11月に島津製作所の社内で開催された新事業アイデア審査会だ。「新事業アイデア審査会で、知財部から知財業務自動化プラットフォームの外販プロジェクトが提案された。私自身CTOとして社内の技術イノベーションや新規事業の創出を推進する立場でもある他、自分が研究開発業務において知財関係に非常に苦労しながら取り組んだという経験もあり、この提案が持つ社会的な価値や大きなポテンシャルを感じ、(事業化)を応援してきた」(西本氏)。

 そして、島津製作所の現場で磨き上げられた知財ノウハウとIP Agentの知財営業力を組み合わせ、Genzo AIを設立した。

「Genzo AI」の提供を開始 「Genzo AI」の提供を開始[クリックで拡大] 出所:島津製作所
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