「環境への配慮」「高い洗浄力」、そして「不燃性」。AGCはこれらの要素を満たすHCFO系の溶剤「AMOLEA AS-300」を開発し、2018年から販売している。AGCに同製品の開発の背景や特徴、現在の状況、今後の展開などについて聞いた。
フッ素系溶剤は、引火点がなく速乾性、高浸透性、熱的・化学的安定性、低材料影響、低毒性などの特長を持つ。このため、精密部品や光学部品の洗浄、シリコーンオイルの希釈塗布溶媒など、さまざまな用途で使われている。
近年は、環境意識の高まりにより、オゾン破壊だけでなく、地球温暖化への影響が小さい溶剤が求められている。このニーズを踏まえて、AGCはハイドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)系のフッ素溶剤「AMOLEA AS-300」を開発し、2018年から販売している。
同社 化学品カンパニー 開発企画部 企画管理室 開発管理グループ マネージャーの光岡宏明氏、インテグレイテッドケミカルズ事業本部 先端素材事業部 市場開拓・営業グループ プロフェッショナルの花田毅氏、同グループ 溶剤統括の谷辺倫則氏に、AMOLEA AS-300の開発背景や開発で苦労した点、特徴、現在の状況、今後の展開について聞いた。
1970年代から、不燃性、低毒性、油脂溶解性を兼ね備えたフッ素系溶剤としてクロロフルオロカーボン系のCFC-113が電機/電子、精密機器の部品向けの洗浄剤に広く使用されていた。しかし、CFC-113はオゾン層破壊の影響があり、オゾン層保護の観点からモントリオール議定書で規制対象物質に定められ、先進国では1995年末に全廃となった。
AGCは、CFC-113と比べてオゾン層破壊への影響を低減したハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)系溶剤として、「アサヒクリン AK-225」を世界に先駆けて開発し販売したという。同製品はCFC-113と同様に、洗浄分野を中心に幅広い用途と市場で使われてきた。
しかし、アサヒクリン AK-225は少ないながらオゾン層破壊係数を有していたため、モントリオール議定書で順次削減/全廃が定められ、日本では2019年末での生産全廃となった。その後、オゾン層を破壊しない次世代のフッ素系溶剤としてハイドロフルオロカーボン(HFC)系やハイドロフルオロエーテル(HFE)系のフッ素系溶剤が開発され、AGCはHFE系の「アサヒクリン AE-3000」を製品化した。しかし、HFC系やHFE系は分子中に塩素原子を持たないため、油脂溶解力が低く、HCFC系の代替溶剤として金属加工部品への洗浄には適応できず、パーティクルなどの軽微な汚れの洗浄に限定されていた。
アサヒクリン AK-225の後継品開発へのニーズに応える製品として、AGCは10年近くに及ぶ開発期間をかけ、環境影響が小さく、油脂の溶解性も備えたHCFO系溶剤のAMOLEA AS-300を開発し、2018年に発売した。
AMOLEA AS-300は、化学物質の安全性の重視に伴い規制が強化されつつある臭素系溶剤に代わる洗浄剤としての期待も高まっている。なお、アサヒクリンはオゾン層破壊の影響低減を目指したブランド名に対して、AMOLEAは地球温暖化の影響低減を目指したブランド名で、AGC Makes Hydrofluoro Olefine as Alternativesから作られた造語である。
光岡氏は「当社は、さまざまな時代で国内外の規制に対応したベストな溶剤を製品化してきた。AMOLEA AS-300の開発に当たっては、環境に向けて『Low-GWP(低地球温暖化係数)』『Recyclable(再生可能)』、性能に関して『Solubility(溶解性)』『Quick Drying(速乾性)』、安全性として『Non-flammable(不燃性)』『Low-toxicity(低毒性)』の6つのコンセプトをクリアすることを掲げた」と話す。なお、AMOLEAシリーズでは溶剤の他に、「AMOLEA 1234yf」などの環境対応型フッ素系冷媒も展開している。
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