トヨタ自動車の本社工場内に1時間あたり96kgの水素製造が可能な水電解設備が完成脱炭素

トヨタ自動車と千代田化工建設は、「第25回 SMART ENERGY WEEK【春】」内の「H2 & FC EXPO【春】─ 第25回[国際] 水素・燃料電池展」において、「5MW 水電解システム発表会」を開催し、両社が共同開発した水電解設備の概要を説明した。

» 2026年03月19日 06時30分 公開
[坪田澪樹MONOist]

 トヨタ自動車と千代田化工建設は、「第25回 SMART ENERGY WEEK【春】」(2026年3月17〜19日、東京ビッグサイト)内の「H2 & FC EXPO【春】─ 第25回[国際] 水素・燃料電池展」において、「5MW 水電解システム発表会」を開催し、両社が共同開発した水電解設備の概要を説明した。同設備は同月中に稼働を開始する予定だ。

会場で披露した水電解商用実証プラントの模型[クリックして拡大]
千代田化工建設の松岡憲正氏

 両社は2024年に大規模水電解設備の共同開発および戦略的パートナーシップを発表し、トヨタ自動車本社工場の水素パーク内に水電解設備の導入を進めてきた。協業の原点は2023年3月にスタートした水電解設備についての取り組みだ。トヨタ自動車の「MIRAI」に採用されているFC(燃料電池)スタックなどを流用し、水を電気分解して水素を製造する水電解設備をデンソー福島の工場に設置した。

 千代田化工建設 顧問・社長補佐の松岡憲正氏は「プラントと自動車は全く違う世界のように見えるが、われわれの“大義”は同じだ。将来的に期待されるエネルギーである水素を身近にすることに技術で応えていく。その思いが、今回の協業のスタートだった」と語る。

 トヨタ自動車では、自動車用のセルスタックと水電解用のセルスタックの混流生産ができるようにラインを設計している。「車づくりで磨いてきた量産設備をそのまま水電解用にも生かす」をコンセプトに掲げて部品の共通化や生産設備の共用化を進めてきた。セルスタックを小サイズで高密度、低コストで生産できる環境を構築した。

混流生産によるシナジー効果について[クリックして拡大] 出所:トヨタ自動車
トヨタ自動車の濱村芳彦氏

 2023年にデンソー福島の工場に導入した水電解設備と比較すると、同じ敷地面積にもかかわらず電解容量は5MWに、1時間あたりの水素製造量は96kgとなり、大きく生産性が向上している。トヨタ自動車 水素ファクトリー チーフプロジェクトリーダー(CPL)の濱村芳彦氏は「付帯設備の集積化は千代田化工建設で進めていただき、デンソー福島工場と同じ敷地面積で約12倍の水素が作れるようになった」と語る。

デンソー福島工場とトヨタ自動車本社工場の水電解設備の比較[クリックして拡大] 出所:トヨタ自動車

 新しい水電解設備に使用するセルスタックをカートリッジ形式にすることでメンテナンスを容易にしており、現場で素早い交換が可能だ。また、水素コストの低減に向けて、ハード面以外にも運転/保守面からの取り組みも進めている。

 同設備の運転支援システムには、トヨタ自動車のセルスタックの劣化解析プログラムや千代田化工建設のプラント制御ノウハウ/知見/各種シミュレーション力を組み合わせている。これにより、設備のオペレーションに関わるコストを10%以上削減し、部品交換やメンテナンスにおけるダウンタイムを半減可能だ。

 加えて、装置の運転稼働状況をデータとしてAI(人工知能)に学習させている。これにより、水素の需要量の変動や再生可能エネルギーなどの供給電力側の変動、電力価格の変動に対して、経済性を考慮した最適な運転制御を可能にし、事業者の水素製造収益を最大化している。

 同設備で精製した水素に関しては、自動車部品生産時の熱利用、燃料電池生産に活用する。トヨタ自動車本社工場内で稼働するFCフォークリフトの燃料として使用し、工場内輸送の水素化を進める。また、水素に関わる研究開発に使用する燃料としても活用していく。

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