間接業務に潜む膨大なロスに気づいた時、多くの企業が犯しがちな過ちがあります。それは、「よし、業務を効率化するために、数千万円かけて全社統合型の巨大なシステム(ERP)を導入しよう!」と息巻いてしまうことです。残念ながら、間接業務の改善において、最初から大規模なシステム投資を行うことは有効ではありません。
なぜなら、既存の業務プロセスが整理されていない状態で巨大なシステムを導入しても、「現状の非効率なやり方を、高価なシステムの上で再現するだけ」になるからです。業務の順番が整理されていないのに、最新のロボットを導入して失敗するのと同じ構造です。ですが、システム導入において、日本では「まず、既存業務プロセスを調査し、システムをカスタマイズして納品しよう」という方向性でプロジェクト自体が進み、複雑怪奇な巨大システムが完成してしまったという事例が跡を絶ちません。
間接業務の改善において本当に重要なのは、巨大なシステムを買うことではありません。「現場の人間が、1つ1つの行動(プロセス)をどう変えるか」、そして「社内に散らばる情報を、どう一元的に集約するか」。この2点に尽きます。
そこで私が強く提案したいのが、「ノーコードツール」を活用した改善アプローチです。具体的なツール名を挙げれば、kintone(キントーン)や、ClarisFileMaker(クラリスファイルメーカー)などが代表的です。
さらに言えば、高度な専用プラットフォームでなくても構いません。Googleスプレッドシートや、クラウド上で共同編集できる共有Excel(Microsoft365など)も、立派なノーコードツールの一部と言えます。プログラミング言語を書かなくても、誰もが画面上の設定や簡単な関数で、自社専用の業務の型を構築できる仕組み全般を指します。
とは言っても、ノーコードツールを使うことが目的ではありません。真の目的は、業務の流れとデータを「誰でも把握できる形」に変換し、そこから「改善の糸口」を見つけ出すことにあります。特定の担当者しか理解できない複雑怪奇なマクロやブラックボックス化された手順ではなく、チーム全員が見て理解できるシンプルなスプレッドシートやアプリこそが、次なる改善のスタートラインなのです。
ノーコードツールを使えば、現場の担当者自らが「この入力項目は不要だから削ろう」「次の工程に回す時のクリック数を減らそう」と、自分たちの業務の理論原単位を追求しながら、即座に仕組みを修正し、改善のサイクルを回すことができます。
そして、ノーコードツールを間接業務に導入するもう一つの、そして最大のメリットがあります。それは、「誰が、どのタイミングで、そのデータを触ったか・処理したか」という「ログ・タイムスタンプ」が自動的に記録されることです。
製造現場の皆さまなら、この価値の大きさが痛いほど分かるはずです。工場において、設備の稼働状況やチョコ停の頻度を正確に把握するために、PLC(プログラマブルロジックコントローラー)からセンサーデータを拾ったり、IoTツールでシグナルタワーの点灯時間を計測したりしますよね。
間接業務における「データの作成日時」「更新日時」「承認日時」といったログは、まさに工場のIoTセンサーが弾き出すデータそのものなのです。
例えば、「営業が受注を入力した時間」と、「生産管理が製造手配をかけた時間」のログを引き算すれば、その間でデータがどれだけ「滞留(手待ち)」していたかが、秒単位で明確になります。
「システム入力自体は3分で終わっているが、次の部門がデータを開くまでに1日半かかっている」
「月末の数日間に、特定の承認者にデータが集中し、そこが明らかなボトルネックになっている」
このように、作業の開始/終了のタイミングを簡便にロギングできる仕組みを入れることで、部門間をまたがるボトルネックや手待ち時間が、恐ろしいほど残酷に可視化されます。これは、間接業務における「理論原単位の導出」や「PERT図の作成」において、極めて強力な武器となります。
ここで再度強調しておきますが、ログを取ることは決して社員を「監視」するためではありません。製造現場のIEと同様に、事実をベースにして「この手待ちはなぜ発生しているのか?」「承認フローが複雑すぎるのではないか?」と、プロセスそのものを客観的に議論/改善するための「仕組み」なのです。
ノーコードツールという「きっかけ」から、現場主体で日々改善を高速で実施する文化の醸成にチャレンジしてみませんか?
大規模なプロジェクトを動かすのではありません。今まさに、隣の職員が実施しているクリック、画面を開き、スクロールし一番下の見にくいチェックボックスにチェックを入れている。その作業に疑問を持って1秒にこだわり改善することが、皆さまが取り組むべき第一歩になります。
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