ブラザー工業はこれまでの製造DXにおいて、設計部門はCADでモノを作りそれをBOM(Bill of Materials、部品表)として製造側に回していた。そして、ExcelやWordを使用して製造現場で使用する帳票を作り込む作業を行っていた。「これは一見、デジタルとデジタルでつながっているように見えているものの、疎連携であった」(西村氏)。
同社ではこの状態から、BOPをコアにして工程設計やコスト試算を行い、デジタルで開発側にフィードバックをするなど連携をさらに密にすることで一気通貫のデジタル情報で裏打ちされたモノづくりを実現していった。これにより、最後までデジタルでつながるため、製造での課題なども設計側に円滑にフィードバックできるようになり、次世代機種、後継機種のスパイラルアップにも貢献している。
同社は、CADで作成した3DモデルとBOM上の各部品の1対1対応を開発部門に要請し、その後完成したデータをPLMシステムに載せている。その際に、工程設計者や生産技術者の視点で確認すると正しい組立順や加工順に整っていない。これらを整理してデジタルに書き込んだものをBOPとして活用している。
プリンタ事業でのBOPの活用事例として、組立成立性を3Dモデルによる干渉チェック検証、工具自動配置、生産/製造起点での設計課題の洗い出し、組順定義/状態を視覚的に確認、翻訳レスな工程設計、工程検討/ラインバランス調整、ボトルネック工程確認などがある。これらの取り組みにより「コンカレント化」を実現し、工程リスクの評価をフロントローディングすることで生産準備までの期間短縮を図り、同時に設計の初期段階から製造時のリスクをつぶすことが可能となった。
実際に同社では毎年9月に新製品を発売しているが、その生産準備期間の短縮につながっている。これは同社の品質向上や工程FMEA(故障モード影響解析)にも役立っている。BOP上での工程リスクチェックを実施することで、設計の初期段階から製造時のリスクを抑えることが可能だ。
製造現場では各製造従事者にBOPを見せることはない。そのため、製造の3大帳票といわれる「工程フロー図」「QC工程表」「作業指示票」を提示するなどして作業を実施している。BOPには3大帳票に関わる全てのインスタンスが含まれており、BOPを作成することはこれまでの製造帳票を作り込むこととほぼ同義となる。これにWordやExcelを張り付けたり、PDF化したりして現場に提示する3大帳票も作っている。「現在は同時翻訳ができる仕組みも作成しており、帳票を作って翻訳もするという作業(工数)を75%削減できた」(西村氏)。
同社はグローバル企業であることから特に工程の表現にはこだわったという。「ネジ/ねじ」「取る/外す」「積む/置く」など、同じモノや作業でも表現が変わってしまう。これらを日本語および現地の言語も併せて製造に関わる文言の標準化を実施し、作成者に起因する揺らぎやバラつきを無くした。これにより作業者の認識間違い、翻訳の揺らぎを削減した。さらに標準化された文言を記号化することで、作業指示書に利用する言語データベースを簡略化(登録数を削減)し、指示書作成時の文言選択の効率化が可能となった。
講演ではこのほか、BOA情報のBOPへの活用、サステナブル製造に対する取り組みについても解説した。
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