近年、製造業でも「ソフトウェアデファインド」という言葉が定着しつつある。制御や機能をハードウェアから切り離し、ソフトウェアで定義するという考え方だ。そして、分離されたソフトウェアは、外部とつながる「オープン化」によってさらなる拡張性を獲得する。ソフトウェアデファインド×オープン化の流れを考察する。
近年、製造業でも「ソフトウェアデファインド」という言葉が聞かれるようになった。ソフトウェアデファインドオートメーション、ソフトウェアデファインドマニュファクチャリング、ソフトウェアデファインドファクトリーなどの概念が、欧米系のベンダーを中心に語られている。
ソフトウェアデファインドは、もともとIT分野で進んでいた取り組みだ。身近な例としてはスマートフォンが挙げられる。スマートフォンというハードウェアの機能は、アプリやOSによって柔軟に定義、拡張されている。自動車業界でも、ソフトウェアのアップデートで機能や性能を高める、ソフトウェアデファインドビークル(SDV)が注目を集めている。
詳細は連載「製造業ソフトウェアデファインドの潮流」の第1回「ソフトウェアデファインドはオートメーションに何をもたらすのか」を参照していただきたいが、要点をまとめると、これまでの工場では、PLC(プログラマブルロジックコントローラー)などの現場の設備(ハードウェア)と機能や制御が一体となっており、選定されたハードウェアにひも付くソフトウェアを使って機能を定義していた。機能を変更するには、ハードウェアの変更を伴うことが一般的だった。
それに対してソフトウェアデファインドの世界では、ソフトウェアが主体となる。ソフトウェアを変更したり、アップデートしたりすることで、設備の機能を変えることが可能になり、立ち上げ時も、ソフトウェアで機能を定義し、それに適したハードウェアを選定するという考え方へと変わる。。これにより、製造現場は内外の状況の変化により柔軟に対応できるようになる。
IDCが2025年10月に発表した予測レポート「Worldwide Supply Chain and Industry Ecosystems 2026 Predictions」では、「2029年までに工場の30%がオープンで仮想化されたソフトウェアデファインドの自動化プラットフォームを利用して制御システムを一元的に構成、管理するようになる」と指摘している。
国内ベンダーでは、東芝がソフトウェアデファインドトランスフォーメーションという言葉などを用いている。
同社は、既にクラウドPLCである「Meister Controller Cloud PLCパッケージ typeN1」を開発し、クラウドから現場の制御を可能にしようとしている。直近では、NTTのIOWN APNを用いて、300km離れた拠点から20ms以内の遠隔制御や4fpsでのAI(人工知能)外観検査に成功しており、2027年度以降の実用化を目指している。
東芝 代表執行役社長 CEOの島田太郎氏が「IIFES 2025」(2025年11月19〜21日、東京ビッグサイト)の基調講演で触れた、QR乗車券を活用した交通チケットオープン化プラットフォーム「どこチケ」は、製造業ではないが、ソフトウェアデファインドの具体例として分かりやすい。
従来、鉄道の乗車券は券売機で発券されており、乗車券を発券する機能と券売機は一体だった。これに対し、乗車券を発券する機能(ソフトウェア)と券売機(ハードウェア)を分離し、さらにソフトウェアをオープン化したことで、鉄道会社以外の企業も乗車券を自社のサービスと組み合わせて提供できるようになった。
この例が示すように、ソフトウェアデファインドは単に機能をハードウェアから分離するだけでなく、その機能を外部とつなぐオープン化を通じて、さらなる価値の拡張につながる。
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